携帯獣
□傲慢な願い事
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小さく名前を呼んだ。聞こえなかったようで、相手は振り返ることなく足を進める。遠ざかっていくのが見えているのに引き止めも、追い掛けもしない。できなかっただけなのかもしれない。それよりも、別の方向に走りださなければ成らないのに。それすらも出来ない。臆病者だとわらえばいい。
怒号と悲鳴と、耳障りなサイレン。四方を駆ける足音の最悪な演奏。
逃げなければ。と頭は訴えていると云うのに何故この足は動かない。この場で終わりにしたいのだろうか。それもいいだろう。ガーディの炎に焼かれるのもまた、悪くはない。それならば、やる事はひとつとなる。あの方が去った方向に背を向ける。逃げも隠れもせずに臨戦体勢。こんな奴に捕まったばかりに、哀れな手持ち達。
「御逃げ下さい。この場で貴方様の盾となります故」
「ご武運を。サカキ様」
赤と白のボールが一瞬、宙に溶けそこから光りが破裂する。ロケット団として散れるならばこの身、惜しくなどありません。
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