give me...

□シュワリ滲む甘さの油断
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「ラムダ様、僕は何をしたらいいんですか?」
「そうだなー・・・」


現在、所属の隊が外に出ていて留守番を喰らっているしたっぱのしたっぱ。通称ユーレイは、別の隊であるラムダ隊に雪崩れ込む感じで預かられていた。
ラムダ隊所属のしたっぱ達はついさっき出て行った。本来他の隊の所属であるユーレイに此処の隊の仕事は無かった。


「ほんじゃぁまぁ。掃除」
「この部屋のですか?」
「そ」
「はい」


掃除。掃除か。箒を手にとって窓を開けて換気を始める。書類整理などしながらゴミを纏め始めた。その様子をみながらラムダは納得する。手際がいい。それだけを確認して、机の上に乗った書類の片付けに取り掛かった。


「俺はちょっと出てくるからな」
「行ってらっしゃいませ」


小さな子どもに見送られる。親か何かか俺は。そう思いつつ、書類を持って部屋を出て行くラムダ。後ろ手で扉を閉めてから、僅かに表情を変えた。廊下を歩きながらラムダは考えていた。一つの扉の前で止まるとノックをして直ぐに中に入った。


「おらよ」
「早かったですね」
「嫌味か」


出来たばかりの書類をラムダは突きつけた。それに目を通す最高幹部の姿。それを見ながら口を開いた。


「よっぽどじゃねぇか」
「何がですか」
「帰ってきてるぜ」
「誰がですか」
「惚けんなよ」
「えぇ、まぁ。確かに受け取りましたよ」


優雅に微笑む姿は様になる。ラムダはそんな最高幹部を見ながら溜め息を吐いた。


「分からなくもねぇけど。ただの餓鬼だぞ」
「だから、何ですか」
「そうかよ。あぁ、それと。ランスが帰ってくるまで預かる事になったから。文句あるか?」
「・・・そう、ですか。構いませんよ」
「そりゃどうも」


ヒラヒラ手を振りながらラムダは出て行った。皮肉染みた表情を浮かべていたのに気付いたのは本人だけ。



・・・



許可を取ったため、ユーレイがラムダ隊にいることに問題は無くなった。それも二日程度の間だけだが。かったるいや面倒と思いながらも、見捨てる事など出来ないのが。結局、それだけの話し。


「あーあ、ったく・・・って、何やってんだ!?」
「あ、ラムダ様おかえりなさい」
「・・・何やってんだ?」
「掃除です。高いとこ届かないんすよ。そしたらドガースが銜えて、こう」


棚の整理をしたかったユーレイは、何とか届こうと必死だった。そんな時にふよふよとやってきたドガースが口に襟首を銜えて浮かび上がったのだった。そのタイミングでラムダは帰ってきてしまい、その光景を目の当たりにする羽目になったのだ。


「お前の手持ちは?」
「諸事情です」


答えになっていなかった。呆れたように溜め息を吐いたラムダは、煙草に火をつけた。ゆらゆら紫煙が昇って、天井に届く前に霧散していった。





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