携帯獣

□雨宿りの出会い
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サトシは森の中で溜め息を吐いた。空から降り注ぐ雨のせいで、視界が遮られてしまう。これは森を抜けるのは無理だと思い、大きな木の下で雨宿りをしていた。

肩に乗ったピカチュウが水分を払うように身体を振るった。


「止むまで足止めだな。タケシ達ともはぐれちゃうし」
「チャァ・・・」


困った、そう云うように相槌を打つピカチュウ。ざぁざぁと雨音が鼓膜を揺らしていく。
何となく不安になった。


「雨の馬鹿やろー!」


突如、サトシの耳に雨音と違う人の声が聞こえた。何だ何だと声を追う。ピカチュウがその方向を指差した。その方向から叫びながら走っている人影。荒々しく雨に濡れた髪をかき上げながら、また叫んだ。


「いきなり降りだすとか天気予報を信じた私が馬鹿だった!」
「おーい!」
「う!?」
「そこで叫んでても始らないだろ。こっちで一緒に雨宿りしようぜ」


呼び止められ、驚いた人影は立ち止まり驚いたようにサトシを凝視した。降り注ぐ雨が全身を濡らしていた。


「助かった」
「びちゃびちゃだな」
「そっちもね」
「そっちほど酷くないけどな」


髪を絞ればボタボタと水が滴る。うわぁ、と言いながら濡れた手で顔を拭った。ピカチュウに気付き、嬉しそうに撫でる。


「君トレーナーなの?」
「うん。こいつは相棒のピカチュウ」
「へー。私も一応トレーナーなんだよ」
「そうなのか?じゃぁ晴れたらバトルしようぜ!」
「いいねぇ、その案のった」
「あ、でも」
「何か問題があるの?」
「仲間を探さなくちゃならなくてさ」
「なら手伝うよ。だから、バトルしような」
「おう」


まだまだ雨は止みそうに無かった。







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