携帯獣
□骨を打ち鳴らした
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自分でもそれなりに強くなったと思っていた。
辿り着いたシロガネ山。危険な山だと知っていたけれど、その辺境の地が凶暴で強いポケモンを育て上げる。そんな場所。覚悟の上で一歩踏み出したのだ。
そんな必死になって登る場所でもなかったのかもしれないけれど。死にに行くようなものだって。死に急ぐなって。本当、そうだよ。リングマの群れに囲まれるなんてついてないったらありゃしねぇ。
息も絶え絶え。ボールを投げてみたものの、手持ちたちもHPギリギリだ。バックからピッピ人形を取り出して投げる。それにリングマたちの意識がいったうちに逃げ出した。怖かった。こんな誰も居ない場所で死ぬのはごめんだ。道も分からなくなっている。少ないキズぐすりを使いながら進んだ。
そんな時、拓けた空間に出た。先ほどまではフラッシュを使わなければ暗かったのに、ここはその空間自体が発光しているかのように仄かに明るかった。こくりと唾を飲み込む。
空気が、違う。
細い通路。両側は崖。恐る恐る前に進んだ。前方に人影が見えたのは半分ほど行った頃くらい。人だと理解するのに時間がかかった。まさかこんな奥に人が居るなんて。
誰だ、あれは。
赤い帽子を被っている。トレーナー・・・なんだろうか。おそらくそうだろう。
声を掛けてみるべきか。出口が分かるかもしれない。
「あの、」
「・・・・・・」
くるりとその人が振り返る。
その目が此方を捉えた瞬間、一気に力が抜けた。震えそうになる身体を押さえつける。その人はトレーナーだった。無言のままボールを投げる。
光と共に現れた一匹のポケモン。そんな事を考える余裕は無かった。
骨を打ち鳴らした
(恐怖など捨てたのに)