A×L

□start
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アレンの鼻とリンクの頬は最早くっつく寸前。
身体同士は当然密着状態。

心臓の音が胸に、吐息が耳に、体温が肌に直に届く状態のまま、リンクは1ミリも動けなかった。

「あの…ウォーカー?」

どうしたら良いやらわからず、恐る恐るアレンの方へと顔を向けてみるリンク。
鼻と鼻が触れ合う寸前の距離に戸惑いながら、リンクはアレンの寝顔をまじまじと眺めてみた。

白い髪。
案外長いまつ毛。
特徴的なペンタクル。
そして、薄めの唇。

「……」

リンクはふいに、本当にふいに、アレンに触れてみたいと感じた。
今の様な不可抗力によってでは無く、自分の、自分自身の意思で。

「……」

アレンの拘束から片腕をどうにか解放したリンクは、指先でそっとアレンの頬に触れた。

サラリとした、心地良い感触。

指先はゆっくりと頬の上を滑って、やがて唇へと辿り着く。

何故そこへ向かったのかは、リンク自身よくわからなかった。
ただ何となく、無意識のうちにそこへ向かっていた。

下唇に人差し指の先で触れて、ほんの少しだけ押してみる。
ふにふにと柔らかいそこは、寝不足続きの為だろうか、少々かさついている様だった。

「……」

赤の他人の唇になど生まれてこのかた触れた事の無かったリンクは、自分がした行動とその感触に、驚きと戸惑いを隠せなかった。

なのにアレンの唇に触れたリンクの指は、そこに接着剤でもつけられたかの様に離れない。

何故。どうして。

自分が何をしているのか。何をしたいのか。
リンク自身が一番理解出来なかった。

「…私、は…」
「ん…」
「!」

無意識に呟くと同時に突然アレンが眼を覚ましたせいで、リンクは飛び上がるほど驚いた。
ベッドに横になっていた上、アレンに抱き締められた状態だったので、実際には身体がビクリと揺れるだけに留まったのだが。

「あれ?リンク?」
「……」
「ん?ボクいつの間にベッドに…?てかリンクは何でボクのベッドに?」
「…話せば長くなりますがとりあえず腕を離してくれませんか」
「え?あ、うん…」

頭にいくつもの?マークを浮かべたままのアレンが腕を退けたので、リンクはすぐさま起き上がりベッドから出た。
そして未だ早鐘を打つ心拍を落ち着けようと、ティーセットを揃えてあるワゴンへと向かい紅茶を淹れ始めた。

一方、首を傾げつつも起き上がり、ベッドに腰掛けたアレンは、今のこの状況は何なのだろうかと思案する。

確か自分は、山積みの書類にあれやこれやと記入をしていた筈だ。
しかし途中から意識が無くなったところを見ると、眠ってしまったのだろう。
ここのところずっとまともな睡眠を取っていなかったから、仕方ないのかもしれない。

けどそうなると、自分はデスクで突っ伏して寝ていたと考えるのが自然だ。
にも関わらずベッドで寝ていたという事は、リンクが運んでくれたのだろうか?
そうでなければベッドにいた理由がつかない。
まさか寝ぼけて自分で歩いていったワケではないだろうし。

そこまでは別にいい。ベッドまで運んでくれたのなら、そこはむしろ感謝するべきところなんだから。

けど、リンクが一緒にベッドに寝ていたのは一体どういう事なのだろう。
リンクが監視についてからは生活を共にしているとはいえ、寝床くらいは流石に別々だ。

しかもただ並んで寝ていたのでは無く、ぴったりと密着した状態でいたというのは…。

いや、密着していたのはどうやら自分からリンクに抱きついたせいらしいので、そこはともかくとして。

でも引き剥がすなり突き飛ばすなりして離れれば良かったろうに、リンクはそれをしなかったどころか、何故かアレンの唇に触れていたのだ。
それこそが一体何だったのか、アレンは気になって仕方が無かった。

「あの、リンク…」
「キミも飲みますか、ジャーマンカモミールでよければですが」
「あ、うん…」

そう答えてすぐに、リンクはふたり分の紅茶を手に歩いてきた。
どうやら既にふたり分を淹れていたらしい。

「どうぞ」
「あ、ありがとう」

アレンに紅茶を手渡すと、自分の定位置であるカフェテーブルへと向かい、チェアに腰を下ろすリンク。
自分の隣に座ってくれなかった事を、アレンは何故だか少し寂しく感じた。

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