銀魂
□a little
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しつこく絡まれた。サディストは厄介だ、と私はつくづく思うのだ。
人を巻き込むその特性はどうにかならないものだろうか。
苛めて快感を得るなんざとんでもないイカレタ変態野郎だ。
まあ何が一番むかつくって、それを認めた上で自慢げにそう自称するあいつなんだけど。
両腕を掴まれた。逃げようにも逃げられない。顔がいつもより近くって吸う吐く息が空気に薄れて私の鼻をよぎった。
目をそらすのは負けたことになるのだろうと思い、未だ奴を睨みつけたままでいる。
だが心臓音はお見通しなのだろう。男はにやにや笑ってまたギュッと、私の両腕を彼自身の両腕でしっかりとおさえつけている。
壁につきつけられた私の背中に冷や汗がつたった。
そこで男のくせに美しく整った顔が近付いてくる。てっきり唇でも奪われるのかと思って目を思い切りつくると恐れた感触はまだこない、まだこない。まだ…
「あれ、」心の中で呟くと男は顔を離して、目を強くつむる私をずっと見ていたというように可笑しそうに私を嘲笑った。うん、ドエス。
するとどういうわけか、また男は同じように顔と顔の距離を狭めてくる。同じ手はくらうもんかと気張って動じないフリをしたが、心臓は云う事を聞いてくれない。
だが彼は今度は口元を耳元に。奴はわざとらしく吐息を聞かせて私の右耳を確かに捕えた。
「お前、俺のこと好きだろィ?」
私はとうとう頭にきて、腕をふさがれたなら足があるじゃないかという発想を手にした。
そのまま思いつくがままにそいつのハラワタを膝で蹴ったら、流石のドエスも予想外の展開に驚いたのか慌てて咄嗟に私の腕を解放し、蹴られたお腹を苦しそうにさすっている
それから信じられないものを見るような表情で「なんて女だ」という男の屁理屈をスル―した私。
ふん、せいぜいほざいてな。ざまあねえぜ沖田。あんま調子に乗るからだ。
知ってんだからな。誰よりも意地悪なのは誰よりも臆病だからってこと。知ってるよ。分かってるよ、それくらい。
でもまあ、そうね。素直に告白も出来ない男に私も素直じゃない答えをあげようか。
そう思いつつ、波打つ脈をほっぽって、私は静かに息を吸ったのだ。
「沖田。私ね、」
あんたのこと、ちょっとだけ好きよ。
ちょっとだけ、
ね。
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拝具、
サディストは愛情表現が下手なだけで本当はその人を死ぬほど愛してる。
と、云うよりも…。
その人を死ぬほど愛してるからこそ壮大な気持ちを上手く面えられなくて愛情表現が下手になるんだ。
と私は思います(さくぶん)