novel

□結婚記念日
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(……終わった…)

3時間にも及ぶ手術が終わり、手術準備室なある長椅子に腰掛けた。深い溜め息を吐くとすっ、と目の前に缶コーヒーが差し出された。

「お疲れ様です〜」

顔を見ずとも異様に高い声と独特の話し方で、すぐにアイだと気付いた。素直に缶コーヒーを受け取り、プルタブを開け、1口飲んだ。アイは当然のように俺のすぐ隣に腰を降ろした。

(エクセラに、メールしなくてはな…)

そう思い、携帯電話を取り出し新規メールを作成する。それを横目に見ていたアイが口を開いた。

「…奥さんにメールですかぁ〜?」
「悪いか」
「そんなことないですけど〜…」

アイは何か言いたそうにしながらも口を閉ざした。

「何だ。言いたいことがあるなら、はっきりしろ」
「…さっき、お昼食べに外行ってきたんです。そしたら、アル先生の奥さんを見かけたんです」
「ほう…?」

それだけか、そう思ったが続けられたアイの言葉に、思わず目を見開いた。

「男の人と楽しそうに歩いてました」
「……男、だと?」
「はい〜。筋骨隆々って感じの人でしたよ」
「…………」

無言で立ち上がり、アイをその場に残し、手術準備室を出た。
俺は居てもたってもいられず病院を後にし、家へと車を走らせた。家に着くまでの間ずっと、俺の頭の中を同じ言葉がぐるぐると回っている。

(不倫、か……)

エクセラに限ってそんなことは有り得ないと思いたいが、何しろそれをしない保証はない。思わず深い溜め息を漏らした。
暫く車を走らせれば、家が見えてきた。車を車庫に入れ、玄関を開けて家の中へ入る。

「アルバート…!早かったのね」
「ああ」
「ふふ…お帰りなさい」

そう言うと、エクセラは俺の頬にキスをした。

「早く上がって?渡したい物があるの」
「…?」

エクセラに引っ張られるようにして、リビングに連れて来られる。

「ちょっと待ってて」

ソファに腰を降ろせば、エクセラは寝室に入って行った。
少しするとエクセラが手に箱を持って、戻ってきた。そして、俺の隣に腰掛けるとその箱を差し出してきた。

「はい、これ」
「何だ?」
「取り敢えず、開けてみて?」

そう促され、受け取った箱を開けてみる。

「ペンダントか…」

箱の中には、シンプルな細いプレートがトップになった、シルバーのペンダントが入っていた。

「それね、ペアなの」

そう言って、もう1つのペンダントを俺に見せた。

「本当はリングにしようと思ったんだけど…もう、あるでしょ?」
「だから、ペンダントか?」
「気に入ってくれた?」
「ああ…ありがとう」

エクセラに口付ければ、ふわりと笑みを零した。

「良かった」
「…貸せ」

エクセラの手からペンダントを取り、エクセラの首に付けてやる。

「私も付けたいわ」
「ああ」

箱からペンダントを取って、エクセラに手渡せば、嬉しそうに俺の首に付けた。

「ふふっ…」
「俺も何か買ってくればよかったな」
「いいわよ?別に」
「だが…」
「…………それじゃあ、私が満足するまでキスさせて?」

小首を傾げて問われ、自然と口角が上がった。

「今朝あれだけしといて、まだ足りないのか」
「あれだけじゃ全然足りないわ」
「ククク…気が済むまでしろ」

俺の言葉を合図に、エクセラは何度も唇を合わせ始めた。
始めは触れるだけだったキスは、徐々に深くなっていく。

「ん……ふ………っん…」

互いの舌を絡め合い、呼吸すらも奪っていく。

「……ん…ぁ……はふ……」
「……まだ、か?」
「はぁ……ん…ま、だ……っふ…」

幾度となく角度を変え、より深くを蹂躙する。

(……今なら、聞けるか…?)

ふと思い立ち、唇が離れたのを見計らって、薄く開いた唇に指を差し込む。

「……っは…はぁ…アル、バート…?」
「まだ足りないだろうが、質問に答えろ。そうすれば、満足させてやるぞ?」

そう言えば、エクセラはとろんとした瞳をして頷いた。

「お前は出掛けると言っていたな…1人で出掛けたのか?」
「…違うわ……っは、クリスと一緒に…」
「クリスと?」
「貴方へのプレゼントを選ぶの…手伝って貰っ、たの」

(なるほど。そういう事か)

「不倫をした訳じゃないんだな?」
「不倫、なんて…したいと思ったこと、ないわ」
「そうか……」
「……答えたんだから…は…」
「そうだったな…」

エクセラの言葉に安堵し、褒美だとでも言うように、濃厚な口付けを贈った――――。










「ねぇ?アルバート」
「どうした?」

―――ちゅっ。

「これからも宜しくね?」
「ああ」
「愛してるわ」
「俺もだ」



















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勝手に3月5日はウェスエク夫婦の結婚記念日にしちゃいました。
3月5日はバイオ5の発売日だったので。これはちょうどいい!と思ったので。





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