novel
□出会いは必然的に
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部屋に帰り、すぐにスーツを脱ぎ、ハンガーに掛けた。ソファに腰を降ろしテレビを付け、ニュースやつまらないバラエティー番組などを見る。
(夕飯、作るか……)
ネクタイを外し、ソファから立ち上がると、インターホンが鳴った。
(こんな時間に誰だ…?)
ドアの前まで行き、ドアスコープを覗いた。
(!……エクセラ)
その姿を見るなり、迷うことなくドアを開けた。
「…何だ?」
「もう夕飯は済ませたの?」
「いや、まだだが」
「良かったら私の部屋で一緒にどうかしら?」
「……いいのか?」
「勿論よ。それに、1人で食べたって味気ないもの」
1人暮らしの女の部屋に行っても良いものか迷ってしまう。だが、美人からの折角の誘いを断るような愚かな男も居ないだろう。そう思い、夕飯を共にする事を了承した。
「良かったわ。じゃあ、支度が出来たらまた呼びに来るわ」
「ああ、分かった」
エクセラが自分の部屋へ戻ったことを確認し、ドアを閉めた。
リビングへ戻り、ソファに崩れ落ちるように座った。動悸が早い。あの瞳を見ると吸い込まれそうだ。
(どうしたんだ…俺は……)
俯き、額に手をやったまま動悸が治まるのを待った。
15分くらい経っただろうか、再びインターホンが鳴る。
ドアを開けば、エクセラが部屋に来て、と言う。短く返事をし、自分の部屋を後にした。
「入って」
「ああ……」
エクセラの部屋は白を基調としたシンプルで、落ち着いている。ポイントカラーとして赤を使っている所が、女らしい。
目を忙しなく動かし、部屋中を観察する。
「座って待ってて」
エクセラに促されるままに、ダイニングテーブルに就いた。次々とエクセラの手料理であろう料理がテーブルに並べられていく。そのどれもが、食欲をそそる。
「白ワインで良いかしら?」
「ああ」
白ワインの注がれたグラスが置かれ、向かい側の椅子にエクセラが座った。
「さ、食べて?貴方の口に合えば良いんだけど」
「……頂こう」
パスタをくるくるとフォークで巻き取り、口に運んだ。
「…どうかしら?」
「………美味い」
そうポツリと呟けば、エクセラは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ふふふっ…良かった」
黙々と食べ進め、あっという間に完食してしまった。
エクセラが食器を片付け始めたので、手伝おうとすれば座っていて良いと言われ、渋々柔らかなソファに腰を降ろした。
(……あまり長居する気は無かったんだが…)
食器を片付けた終えたエクセラが、リビングへ来る。
「ねぇ?私、貴方のこと何て呼んだら良いかしら?」
「…何でもいい」
「何でもって……じゃあ…アルバート」
少し間を開けて呟かれた自分のファーストネームに、胸がドキリと跳ねた。
「アルバートって呼ぶわ。…いいでしょ?」
「…好きにしろ」
素っ気なく言葉を返し、ソファから立ち上がった。
「あら、戻るの?」
「ああ。邪魔したな」
「………ねぇ?」
「何…っ―――!」