novel
□バレンタイン
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買い物を終え、家に帰る。家の中は閑散としていた。アルバートの姿は見えない。今の時刻は、午後8時。いつもなら帰ってきているはずだが、今日はまだのようだ。仕方なくチョコをリビングのテーブルの上に置き、ソファに座ってアルバートの帰りを待った。
そして、時刻が10時を回った頃、玄関の開く音が耳に入った。
(やっと帰って来たわ)
そう思い、軽い足取りで玄関へ向かった。玄関で靴を脱ぐアルバートの姿を視界に捉え、思わず頬が緩んだ。
「アルバート」
名前を呼び、歩み寄って抱き付いた。
「遅くなった」
「そうね。…どうしたの?随分、疲れてるみたいだけど」
そう口にすれば、私を強く抱き締め、うんざりした様子で口を開いた。
「まあ、あれだけの人数に囲まれれば、さすがに疲れる…」
「囲まれたって、女の子達に?」
「ああ」
「ふーん?じゃあ、今日はハーレムを味わったってわけね」
むっとして、嫌味を言ってやればアルバートは眉を顰めた。
「そんなもの、味わいたくもない」
「そう?」
「第一、俺にはお前1人で充分だ。他は要らん」
「ふふふっ…我が儘ね。でも、私も貴方が居れば充分よ」
見つめ合えば、自然と唇が合わさる。僅かに開いた唇の隙間から、舌が入り込みしつこいくらいに口腔を蹂躙する。玄関近くの壁に押し付けられ、壁と背中とがぴったりと密着した。
「んっ……ふ、ん…っ、はぁ…アルバート…待って、っん」
「……エクセラ」
私の制止も聞かず、首筋に舌を這わせ、仕舞いには服の中に手を入れてきた。
「…んっ…ぁ…待って…っ、アルバート!」
アルバートの胸板に手を付き、必死に腕を突っ張る。
「…何だ」
「何だじゃないわ。食べてくれないの?折角、作ったのに…チョコ」
「お前を食べてからな」
「ちょっ…!もうっ、今食べてほしいの!」
(した後に効果が出たって、意味ないじゃない!)
意地でもチョコを食べさせたがる私に根負けしたのか、仕方ないといった様子で了承してくれた。そして、2人でリビングへと向かった。