novel

□寂しさなんて
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――カチ…パチン

最後のピースが嵌り、歪だったそれは漸く形を成した。自慢げにそれを四方八方から眺め、テーブルへ置いた。ふと隣に顔を向ければ、アルバートの姿はなく。キョロキョロと部屋を見回すがやはり居ない。

(何処に行ったのかしら)

時計を見やれば、テーブルの上にあるパズルを組み始めてから2時間が経過していた。ふいにアルバートの言葉を思い出す。

――俺は先に休むぞ

ああ、アルバートは先に休むと言った。
ソファから立ち上がり寝室へ向かう。ドアを開け、大きなベッドを見れば布団が人の形を成していた。静かにベッドへ歩み寄った。ベッドの端へ手をかければギシリと軋む。

「……アルバート?」

返事はない。それもそうだろう。アルバートを気にすることなく、自分の好きなものに熱中していたのだから。怒るのも無理はない。背を向けているアルバートの顔を見ようと覗き込んでみるが、耳まで布団を掛けてしまっているのでそれは叶わない。

「……アルバート」
「……………」
「アルバート…」
「……………」
「…一緒に寝ても?」

返事など返ってくるはずもなく、私は布団の中へ入った。アルバートの広い背中に抱き付き呟いた。

「……貴方が構ってくれなきゃ私、きっと淋しくて死んじゃうわ」
「……………」

ゆっくりとアルバートは体を起こした。そして、隣で寄り添うように布団に入った私を見た。私も同様に上半身を起こす。

「…怒ってるの?」
「……………」
「だって、あれ面白いのよ?中々」
「……………」
「貴方だっていつも何かやってて構ってくれない癖に…」
「……………」
「少しくらい私の気持ち分かった?」
「……………ああ」

返事をしたアルバートの薄い唇に口付け、顎に歯を立てる。

「まだ…怒ってる?」
「……いや」

逞しい腕が伸びて、私を抱き締めた。抱き締められたまま、2人でベッドへと沈む。胸板へ顔を埋めれば、耳元で囁かれる。それは、私たちだけの始まりの合図。
もっともっと私を求めて私を愛して――。







寂しさなんて


(貴方で消して)





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