novel

□ウェスカー家の事情
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朝、5時半に目を覚まし隣で寝息をたてる夫の頬にキスを1つ落とし、ベッドから抜け出す。キッチンに向かい、手早く2人分の朝食を作ってダイニングテーブルに並べる。時計は6時前。それを確認し寝室へ戻ると、愛しい夫を起こす。

「アルバート、起きて。…朝よ」
「……あぁ、分かっている…」

体を揺すれば、アルバートがゆっくりと体を起こす。だが、ベッドから降りる気配はない。何故かは分かっている。小さく笑って触れるだけの口付けをすれば、漸くベッドから降りる。朝、起きたら必ず口付けを1つ。

「着替えたら来て?」
「ああ」

短い返事を聞き、寝室を出る。再びキッチンへ行き珈琲を淹れれば、ふわりと珈琲の香りが広がった。2つのカップを手に朝食の乗ったテーブルへと持って行けば、アルバートがいつものようにスーツを身に纏い現れた。彼がテーブルについてから珈琲の入ったカップを1つ彼の右手側に置き、もう1つのカップを手に向かい側へ座り、自分の左手側へ置く。そして、朝食を食べ始める。食事を摂っている時は大抵、会話はなく。時々話すことと言えば、今日は帰りが遅くなるだとか、明日は休みが取れただとか、それだけ。
…そう言えば、今日は帰りが遅いと昨日から言っていた筈だ。

「今日は、遅くなるのよね?」
「ああ。診察が大量に入っていたからな。診察が終わってからも、入院患者の様子を見ねばならん。帰りは10時頃だろう」
「そう…夕飯は?」
「…不本意だが、院内のレストランで済ませよう」
「分かったわ」

アルバートはある有名な病院の1人の有能な医者で、その容姿で患者からもナースからも人気がある。だから、妻としては不安で仕方がない。彼も私が居るとは言え、1人の男性。誘惑に流されてしまいそうになることもあるだろう。
だが、私と結婚してからもう少しで1年が経とうとしているが、一度も浮気をしていると感じたことはない。もしかしたら、私が気付いていないだけなのかもしれない。けれど、彼は詮索されることを嫌う。その為、深く探るような真似はしない。
朝食を食べ終え、食器を洗う為に流しへ持って行く。慣れた手付きで食器を洗っていく。ふと時計に目をやればあと15分もすれば、7時になってしまう。彼が病院へ行かなくてはならない時間だ。7時になれば最低夜の10時まで会えなくなってしまう。この時間に、いつも寂しさを感じる。小さく溜め息を吐き、珈琲のなくなったカップを持ってキッチンへ行けば、彼も同じようにキッチンへとやってきた。その手に持っていたカップを流しに置くと彼は、私を優しく抱き締めた。

「アルバート?」
「……出来るだけ早く帰れるよう、努力しよう」

私が寂しがっているのに気付いたのだろう、優しい言葉を掛けてくれる。どうしてここまで、私を分かってくれているのだろう。私は彼にどれほど救われたのだろう。きっと、私は彼から離れることはできないのだろう。

「でも…無理は駄目よ?」
「分かっている…」

どちらからともなく唇が触れ合う。触れるだけの口付けは段々と深くなっていき、口腔を激しく貪られる。

「ん…ぁ、アル……バート…っ…」
「……何だ」
「ふっ……じ、かん…ぁっ」

唇の隙間から訴えれば、彼はチラリと時計に目をやった。だが、彼は離れようとはせず、口付けは激しさを増すばかりだった。

「もっ、アル…っだめ…!」
「何が……駄目、なんだ」
「だっ、め…ん…ふぁ……はぁ……だって、そんなにされたら私…シたくなっちゃうわ…」

唇を離して言えば、アルバートの口角が上がった。

「クッ…それは困ったな」
「でしょ?」
「だが、それを鎮めてやるのが夫の務め、だろう?」
「え?……ちょっと…!」

アルバートは私の服を脱がしにかかった。

「アルバート…!」
「大丈夫だ。1時間くらいどうってことはない」

そうきっぱりと言い切って、私の胸を鷲掴み愛撫する。激しい口付けに充分すぎるほど煽られた体はすぐに熱を帯び、反応を示してしまう。

「…んっ…あ…アル……ぁっ、は…」
「我慢は体に毒だからな。素直が一番だ」

そう言うと、私を抱き上げリビングのソファへ連れて行くと優しく降ろした。上着を脱いで背もたれに掛けると覆い被さってくる。
体が熱を帯びているが、自分ではどうしようもないもどかしさにアルバートを誘う。

「はぁ…アルバート…早く、触って…?」
「ククッ…それでいい。妻に我慢させては夫の恥だからな。だが、お前に無理をさせるわけにはいかん」
「いいの…貴方からの愛をこの体で受けるんだもの、多少の無理は承知の上よ?ねぇ…だから、早く…」

甘く熱の含んだ声で誘い、喉仏にキスをしてリップノイズを鳴らす。きっちりと結ばれたネクタイを外して、先程の上着同様ソファの背もたれに掛ける。太い首筋にキスの雨を降らし、Yシャツの釦を外していく。3つほど外して現れた鎖骨に、キスマークを付ければアルバートは抑えられないといった様子で私の胸に吸い付いた。
両方の胸を鷲掴み、片方はピンと形を誇示する突起を舌で転がし、もう片方は親指と人差し指で突起を摘み上げコリコリとしたそれを転がしたり、押し潰したり、時折爪を立てた。

「あぁ…アルバート、ぁっん」
「此処まで煽られるとはな…優しくなぞ出来んぞ?」

胸を貪りながら荒く息を吐き言うアルバートに答えるように、金色の髪にキスを1つ。





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