novel

□もう一回言ってみて?
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エクセラside



ああ、情け無い。
アルバートはとても魅力的な男性で、思いを寄せてしまうのも分かる。けれど、自分以外がアルバートに口付けるなど、許せない。彼を独占したい気持ちが、私を苛立たせた。
資料室から走ってきたが、どうやって社長室まで来たのかは分からない。だが、ここには私一人しかいない。ここで涙を長そうと見られることはない。それに、ここへは滅多に人は来ることはない。
…アルバートはどうしたのだろうか。彼はあの女に答えたのだろうか。色々な思いが駆け巡る。必死に堪えていた涙がぽたり、と一粒零れ落ちた。

(アルバート…)

彼が他の誰かのものになるなど堪えられない。私だけのものであって欲しい。しかし、それを決めるのはアルバート自身だ。私には、どうすることもできない。

「……アルバート…」
「ここに居たか」

突然の声に驚き振り返れば、アルバートの姿があった。その姿にまた一つ涙が零れ落ちた。
ゆっくりと歩み寄ってくるアルバートに合わせて、後ずさる。
とん、と背中が冷たい壁に着いてしまった。咄嗟に俯けば、アルバートは私の顔の脇に両手を着いた。耳元に顔を近付けられる。

「エクセラ」

不意に名を呼ばれ、体がびくりとした。そんな私を見てか、アルバートは溜め息を吐いた。
―――ふわり。

「っ!…っアルバート…」
「泣くな。どうしたらいいか分からなくなる」

優しく抱き締められ、優しく囁かれた。彼らしくない台詞にきょとんとしてしまった。彼を見ようと顔を上げようとしたが、厚い胸板に押し付けられそれは叶わない。珍しく照れているのだろうか。

「…悲しむお前を見たくはない」

ぽつりぽつりと呟くように話すアルバートの声に、耳を傾ける。

「…見ていたんだろう?」
「…………」
「あんなものをされた所で、苛立っただけだ。…これがどう言うことか、分かるか?」

アルバートの問いに首を横に振る。すりと、彼は私の顎に手を添え、触れるだけの口付けをした。ゆっくりと目を開けば紅い瞳と視線がぶつかる。

「お前とのキスは、そうは思えん。……俺は…エクセラ、お前が―――」















「愛しくて堪らない…」

その言葉は私の胸の奥にじわりと染み渡っていく。
しかし、そんな言葉を彼に言われると、羞恥が込み上げてくる。頬を染めて目を逸らせば、逸らすなとばかりな執拗に口付けてくるアルバート。

「ん…アルバート…。ふっ…愛してるわ……」

唇の隙間から呟けば、アルバートの唇が緩やかな弧を描いた。

「……ねぇ」




もう一回
言ってみて?









お題お借りしました。→DOGOD69
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