novel
□もう一回言ってみて?
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ウェスカーside
資料室へ入り、調べる事柄の書いてある本を手当たり次第に手に取っていく。
時間を忘れて没頭していると、一人の女が入ってきた。ここの社員なのだろう。女から視線を外し、また本を読み始める。数分後、「あの…」とか細い女の声がしたので、本から顔を上げれば先程の女が立っていた。
「……何だ」
素っ気ない反応をする。当の本人は頬を染め瞳を潤ませている。…女という生き物は分かりやすい。
(だが…あれとは少し違う)
思考を巡らせていると、女はやがて決心したように顔を上げた。
「その……突然で申し訳ないんですけど…えっと…あの………貴方のことが……好き、です…」
そう告白したと思えば、頬をより紅潮させ俯いてしまった。この女に気付かれないよう小さな溜め息をつけば、ドアの方に気配を感じた。横目で見た。
(ん?…あれは)
ドアの隙間から見える顔は、エクセラのものだった。今のこの状況に酷く戸惑っているようで、入っては来ない。
(入ればいいものを…)
そう思ったとき。
エクセラに気を巡らせていて目の前の女の存在を忘れていた。そのため、女の行動に反応することが出来なかった。
女は俺に抱きついてきたと思えば、続けざまに口付けてきた。
(…………)
ふとドアへ目をやれば、エクセラは目を見開き驚きを隠せないで居た。しかし、すぐに傷ついたような表情になる。
(…!)
エクセラのその表情を見て、目の前の女に言いようのない苛立ちが込み上げてきた。エクセラにそんな顔をさせたこの女を許せるはずがない。
(…この女)
再びドアに目をやるがそこにエクセラの姿はなかった。
内心舌打ちをして、未だに抱き付いて離れない女を乱暴に引き剥がす。女は床に叩きつけられ、唖然とした表情で俺を見やった。
「貴様のような女に興味などない。…失せろ」
冷たく突き放せば、目に涙を溜めて資料室を飛び出して行った。
溜め息を吐き、資料室を後にした。