novel
□もう一回言ってみて?
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今日は珍しくアルバートが調べたいことがあるらしく、トライセル・アフリカ支社へ来ていた。私も研究のことで気になることがあったので、着いてきていた。
「それじゃ、後で来るわ」
「ああ、分かった」
私は彼を資料室に残し、研究室へと向かった。
研究室のドアを開ければ、何人もの研究員がこちらに目をやり、私を視界に入れると挨拶をする。
「例の研究は進んでるの?」
「はい。順調に進んでおります」
一人の研究員に話し掛ければ、手を止めて返事をし、軽く報告をしてくる。やはり出来の良い人間は作業が早く、正確でとても助かる。私は軽く微笑みかけ「その調子でね」とだけ言い、奥の部屋へと入った。その部屋にいくつも置いてあるパソコンの一つを起動させた。
自分の用を済ませ、時計を見やれば二時間以上が経過していた。そろそろ、アルバートの所へ向かうことにした。パソコンを終了させ、その部屋を後にした。
忙しなく動き回っている研究員達に帰ることを告げ、資料室へと向かった。
資料室のドアに手をかけると何やら、部屋の中から声がする。少しだけドアを開き中を見ると、アルバートと一人の女の姿があった。その女は彼に何か言っているようだ。頬を染めている。その時―――
(ッ!!)
女は、アルバートに抱き付き、口付けた。その光景に愕然としてしまった。
(……アルバート)
女への憎悪と悲しさで胸が締め付けられる。涙なんて流したくもないのに、視界がぐにゃりと歪んだ。
(っ……!)
必死に溢れてくる涙を堪え、その場から逃げ出した。