novel
□ねぇ、キスしてなんて言わないから
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カーテンの隙間から朝日が差している。私は、眩しさで目を覚ました。だが、瞼を開こうとはせず、寝返りを打とうと身じろぐ。が、身動きがとれない。仕方なく瞼を開くと息遣いさえ感じられる距離にアルバートの整った顔があった。その近さに驚いて顔を離そうとしたが、彼の腕にしっかりと抱き締められているため、それは叶わなかった。
(これじゃ、身動き取れないじゃない)
溜め息を一つ吐き、彼の顔をじっと見つめる。よく整った端正な顔立ちだ。長い睫毛、筋の通った鼻、形の良い薄い唇。どれをとっても整っていて、羨ましい限りだ。
小さく笑って、彼に口付けた。すると彼は身じろぎを一つした。その彼の髪がはらりと落ち、額にかかった。それを手を伸ばして後ろへ撫でつけるように髪に指を通す。
「…………っ」
(起こしちゃったかしら?)
「……エクセラ…」
私の名を呼ぶ優しげな声にドキリとした。心なしか彼の、抱き締める力が増した気がする。
「…アルバート?」
ゆっくりと彼の目が開かれた。いつから起きていたのだろうか。彼の腕の力が緩んだので、体を起こす。昨日ここに来たとき、彼は眠っていた筈だ。だから、何故私が隣で寝ていたのかを知らない。
「あ…ごめんなさい。すぐに出て行くわ」
立ち上がろうとすれば、私の体はベッドへと戻された。
「いや、その必要はない」
そしてまた抱き締められる。
「抱き枕ってこと?」
「そういうことだ」
どうやらアルバートは二度寝する気のようだ。
「でも、そこまで抱き心地はよくないでしょ?」
「…悪くはない」
彼は、それだけ言うと目を閉じてしまう。そんな彼に頬が緩む。
今だけでもいい。貴方の隣は、私だけのもので。
ねぇ、キスして
なんて
言わないから
(傍にいさせて?)
お題お借りしました。→DOGOD69