novel

□独占的私欲
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貴方は素敵な人だものね。こうなる事も目に見えていた筈なのに……。




「あのっ…ウェスカーさんっ!これ、作ったので良かったら貰ってください!」
「あたしのも貰ってくださいっ!」
「…………」

私の目の前のテーブルには、可愛らしいラッピングの施された箱や可愛らしいデザインの袋が群れを成して積まれている。どの箱や袋からも甘いチョコレートの香りが漂ってくる。そう、今日は2月14日―――バレンタインデーだ。
テーブルの上に積まれているこれらは、全てアルバートに贈られた物。きっとアルバートへの想いが詰まっている事だろう。
トライセルの女性社員が何十人もアルバートの下を訪れてきた。当の本人は、女性たちを相手にせず、完全に無視している。それでも諦め切れないのか、手に持った物をテーブルに置いて部屋を後にする。

(一体いくつあるのかしら……。これじゃあ私からは要らないわね…)

テーブルの向こう側のソファに座るアルバートは、素知らぬ顔で本を読み続けている。目の前のチョコレートたちは視界に入らないようだ。
一つ溜め息を吐き、席を立った。






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