novel
□存在感と違和感
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Excella side
「…じゃあ、この話は以上かしら?」
「ああ。いい言葉を聞けて良かった」
取引先の企業の支社長である、ディル・バロックは安心したように柔らかな笑みを浮かべて言う。
「そう、私はそろそろ行くわ。こう見えて忙しいのよ」
そう言って上質なソファから立ち上がり、部屋を後にした。
エレベーターへと続く長い廊下を歩いていると、携帯が鳴りだした。着信のようだ。立ち止まりバッグの中から携帯を取り出す。相手の名前も見ずに、通話ボタンを押して、耳に押し当てた。
「私よ」
「………俺だ」
少し間を置いて聞こえた声は、アルバートのものだった。自然と顔が綻んでいくのが分かる。通話をしたまま、エレベーターへと歩を進める。
「どうしたの?アルバート」
「……………」
問い掛けてみるが返事はない。いつもなら用件を言うだけ言ってすぐに切ってしまうのに。
「アルバート?」
「…………」
(本当にどうしたのかしら。黙ってるだなんて彼らしくもないわ)
電話の向こうのアルバートにまた問い掛けるべく、口を開く。
「ねぇ、アル…「ミス・エクセラ!」
突然、背後から名を呼ばれ立ち止まり振り返る。そこにはこちらに歩み寄ってくるディルがいた。
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