novel
□いつもの
2ページ/2ページ
アルバートの部屋の前に立つ。ドアノブを捻ろうとして自分の姿を思い出す。
彼はきっと驚くだろう。その反応は気になるけれど、似合わないと言われてしまったら私はどうしたら?
物思いに耽っていると、目の前のドアが突然開かれた。開けたのは勿論、この部屋の主であるアルバートだ。
「何をしている。早くしろ」
「…分かってるわ」
私の姿を見ても何ら変わりのないアルバート。
(気付いてない?まさか、そんなはず…)
ソファに腰掛け、いつものように薬を投与した。
「――終わったわ」
そう告げてソファから立ち上がりドアへと歩み寄った。しかし、それはアルバートの男らしい手に阻まれてしまった。
「…何かしら?」
「今日は違うんだな?」
その問いに肩がびくりと跳ねた。不意に、掴まれている腕を強く引かれた。急激に引っ張られ、そのままアルバートの胸へ倒れ込んでしまった。体を離そうとするが、アルバートが私の背中に手を回す方が断然早かった。完全に腕の中へ閉じこめられてしまう。
「別に、何でもないわ」
素っ気なく返せば、頭上から微かな笑い声がした。早くこの場から逃げ去ってしまいたい。顔を伏せていると顎を掴まれ、上を向かされる。
「よく似合っているな…」
顎にあった手を首筋に滑らせ、鎖骨、胸と徐々に下へと降りていき、腰に添えてきた。
アルバートの言葉が嬉しくて、腕を彼の首の後ろに回してより、体を密着させた。大きすぎる胸が圧迫されて少し苦しいが、そんなことには構っていられない。堪らず自分から口付ければ、当然のように応えてくれる薄い唇。
「…っは…。…嬉しいこと、言ってくれるのね?」
私の首筋に顔を埋めているアルバートを軽く押しのけ、するりと腕から抜け出す。
「…やっぱり、着替えてくるわ」
そう言いドアを開いた。
「また…来るわ」
小さく呟いた。アルバートに届いたかは定かではないが、垣間見た彼の口角は上がっていた。
いつもの
(部屋に戻れば、いつもの私)
_