novel

□NOISE
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私が愛している男―――アルバート・ウェスカー。
あの人はきっと、私のことなんて少しも考えてはくれない。
アルバートは、定期的に薬…ウイルスを投与している。そして、私に薬の投与を任せてくれる。それは、私を信用してくれているから?それとも、そう思わせたいが為?けれど、どちらでも構わない。あの人の為に何かをしてあげられる…それが私の幸せ。 だけど、この悩みは消えない――。







今日も、いつもの投与の時間。 アルバートの部屋の前に立って、ドアをそっとノックする。

「アルバート」
「…入れ」

名前を呼べば、ドア越しに返ってくる言葉はいつも同じ。 それを聞いてから、ドアを開け背を向けて作業をしているアルバートに近付く。

「そろそろ投与しなくちゃ、でしょ?」
「…ああ」

私の言葉に軽く返事をし、こちらを向く。
いつも通り後ろに撫でつけられた金髪。サングラスは、部屋の中だというのに外そうとはしない。
私は、アルバートの部屋に備え付けてある革張りのソファに腰掛け、持っていたアタッシュケースの中から注射器を一つ取り出した。それの蓋を外し、少しだけ中の液体を出して空気を抜く。そして、私の隣に腰掛けるアルバートの腕を取り、注射をする。
この単純な動作が、私にとっては幸せなこと。

「…もういいわ」

注射を終えたことを告げる。

「…………?」

私がそう言えばすぐに立ち上がって作業に戻ってしまうはずなのに、今日はいつまで経っても腰を上げない。



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