novel2

□裏表な心と体
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今日は、朝からエクセラの姿を見ていない。普段ならば鬱陶しいくらいに、俺にまとわり付いてくるというのに。
しかし、よくよく考えてみればこれは俺にとって好都合ではないか。俺は自分にそう言いきかせ、研究室へ向かった。今なら、研究に没頭出来ると思ったのだ。
そして、俺は1人黙々と生物兵器研究に精を出した。

―――ガシャン!

「!」

手を滑らせてしまい、俺の手に収まっていた試験管が床に叩き付けられ、粉々に砕けた。油断したか、と溜め息を吐き床に散らばる破片を眺めた。

(……後で、片付ければいい)

仕方なく他の試験管を手に取り、研究を再開した。

―――カラン!

「…………」

たまたま近くにあったシャーレに肘が当たり、床に転がった。シャーレは多少のひびが入ってしまったものの、割れはしなかった。床に転がるそれを広い上げ、盛大な溜め息を吐いた。
俺はどうしてしまったというのか。いつも通りの俺ならば、こんなミスは有り得ない。何が俺をここまで追い込んでいるというのか。

「………俺は…」

俺の脳裏を、あるものが過った。それは、1人の女だった。いつも、当然のように俺の傍に居て、俺がまともに返事をしないとわかっていても俺に話し掛けるエクセラ。鬱陶しい女だと、面倒な女だと思っていた。けれど、今になってエクセラの存在の大きさを思い知った。
不意に研究室のドアが開かれた。俺は、何とはなしにそちらへ目を向けた。

「ちょっと…どうしてガラスの破片何かが落ちてるのよ」
「!」

研究室に入って来たのは、エクセラだった。その姿を視界に捉えたとき、俺の中で何かがぷっつりと切れた。

「…?…アルバート…っ!」

―――ガシャン!

本日、2本目の試験管が砕ける音が、研究室に響き渡った。

(……何だ…?)

気付くと何か、柔らかいものを腕の中に感じた。ふと視線を下げてみると、艶やかな黒髪があった。

「っ…アルバート…」

はっとした。俺はどうやら、エクセラの細い体を抱き締めているようだ。何故、エクセラを抱き締めているのかは分からないが、胸の内に引っ掛かっていたものが消えていた。それが消えたことで、はっきりした事がある。

(……そうか、俺は…)

「―――必要、なのか」
「え?」

俺は晴れやかな心持ちで、エクセラの頬に手を添えた―――。




-end-









素直が1番なのだよ(*´ω`*)



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