novel2

□『俺と結婚しろ!』
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「…ねぇ、私の部屋…に、来ない?」
「……何故だ?」
「その……あっ、貴方が持って来てくれたウイルスについて聞きたい事があって」
「……分かった」

エクセラと共に取引先からトライセルへと戻る途中、エクセラが俺を部屋に誘った。
突然の誘いに思わず目を見開いてしまった。だが、サングラスを掛けていた為、それを気付かれる事はなかった。平然としているが、内心は恥ずかしながら焦りと期待でいっぱいだ。
もやもやとした感情を抑え込みながら、ひたすら足を進めているとエクセラの足が止まった。部屋に着いたようだ。
エクセラによって部屋のドアが開かれ、俺はスタスタと中に入った。
そのまま部屋の中央にあるソファの方まで歩いてきたは良いが、背を向けたままエクセラの方を振り向く事が出来ない。

「何か、飲む?と言っても、紅茶しかないけど」
「ああ」
「じゃあ、淹れてくるわ」

コツコツとヒールの音が遠ざかっていき、異様な程に緊張していた全身の筋肉が少しばかり解れた。

(何をそんなに緊張などする必要がある?エクセラは俺に聞きたい事があっただけだろう)

落ち着け、と自分に言い聞かせ、ゆっくりと深呼吸をした。

「アルバート」

(っ!!!!)

「待たせちゃったかしら?」
「……いや」
「そう?なら良かったわ」

エクセラはそう言うと、紅茶の淹れられたティーカップを俺に手渡した。それを受け取り一息吐こうとカップを口元へ運んでいく。
そこで漸く気付いたが、エクセラは俺のすぐ隣に立っていた。その近さに驚いたが、取り乱すわけにもいかずカップに口を付けた。こくりと小さく喉を鳴らしカップを、左手に持った受け皿の上に置くと、右手を下へ降ろした。

「聞きたい事があったのだろう?」
「……ええ」
「それは何だ?」
「……………………うそ、なの」

長い間の後に、ぽつりとエクセラは呟いた。すると、エクセラの頭が俺の方へ傾き、俺の右肩に触れた。頭だけでなく、細い腕がするりと絡められ、ぴったりと密着してきた。

「…嘘なの。本当は、聞きたい事何て無いわ」
「何を…」
「アルバートと、もっと長い時間一緒に居たくて…。……怒った?」
「………そんな事は、ない」
「本当?」
「ああ………カップを、置きたいんだが」

分かったわ、とエクセラは俺の手からカップと受け皿を奪い去ると、テーブルの上に置いた。
左手が空き、エクセラの右肩に添え、正面に立った。

「それと…だ、抱き締めるぞ……?」
「ふふっ…うんと強く、ね?」
「!!」





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