novel2

□不満は有る、愛も有る
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仕事を始めてから数時間後、漸く仕事が全て片付いた。ふと窓に目をやると、外は薄暗く空には星が輝いていた。はっとして、即座に腕時計を見た。

(……9時、15分……)

目を凝らしてみても、それが変わることはない。

(エクセラは何と言った?)

6時半によく行くカフェで待ち合わせと言った。そして、遅刻は1時間までだとも言っていた。だが、遅刻は1時間所ではない。急いで病院を後にし、エクセラが居るかも分からないカフェへ向かった。































カフェに着き、中へ入ろうとしたがもう店は閉まっていた。辺りを探すがエクセラらしき姿は見当たらない。

(居ない、か……)

それもそうだろう。エクセラは1時間しか待たないと言っていた。では、もう家に帰ったのだろうか。カフェの窓のに手をついて俯いていると、不意に俺を呼ぶ声がした。顔を上げ、後ろを振り返ればそこにはエクセラの姿があった。

「……エクセラ…」
「今、何時だと思ってるの?」
「…………」

スっとエクセラの右手が上げられた。当然だと思い、目を閉じて、来るであろう衝撃に耐える。しかし、いつまで待ってもその衝撃はなかった。
すると、頬に手が添えられた。ゆっくりと目を開けてみれば、エクセラは心配そうに眉を下げていた。

「心配したのよ?どれだけ待っても来ないから、事故にでも遭ったのかと思って……」
「エクセラ……」
「良かったわ、無事で」

3時間近くも待たせた俺を怒るでもなく、無事で良かったと微笑むエクセラに、胸が熱くなる。衝動的にエクセラの体を抱き締め、肩口に鼻先を埋めた。

「忙しかったんでしょう?それぐらい分かってるわ。今は、貴方が来てくれただけでも良かったわ」

デートは出来なかったけどね、そう言うとエクセラは俺の背へ腕を回した。

「悪かった…」
「ふふふ…今日の貴方は謝ってばかりね」
「……すまん」
「ほら、また謝った」

クスクスと笑うエクセラに、軽く口付けた。

「デートが無いのは不満だけど、アルバートが居てくれればそれでいいわ」
「そうか…」
「愛してるわ…アルバート」
「ああ…」

不満はいつでも消してやれるかもしれないが、この愛は消せそうにない―――。






-end-





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