novel2

□不満は有る、愛も有る
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「私、貴方に不満があるの」

当然ベッドの中でエクセラがそう言った。俺はその言葉に驚き、目を見開いた。
エクセラが俺に不満を抱いている。だが、今までそんな事を直接口にされた事は無かった。それ故に、この動揺を隠しきれない。

「不満、とは……何だ…?」

思わず声が震えてしまった。

「……最近、仕事が忙しいからってデートに連れて行ってくれないのね」
「デート……?」
「前は週に1回は必ず連れて行ってくれてたのに…」

エクセラの言うように、週1回は必ず2人でデートに行っていた。だが、最近は俺の仕事が忙しくなってしまい、ここ1ヶ月程デートに行く事が出来なかった。それをエクセラは不満なようだ。

「悪かった。ああ…今度の日曜は仕事は無い筈だ。その日にお前の行きたい所へ行こう」

そう言ってエクセラをベッドの中で抱き締め、宥めるように長い髪を撫でた。

「本当に?」
「ああ」
「……でも、この前も同じような事言って、仕事が入って行けなかったじゃない」
「今度の日曜は大丈夫だ」

強い口調でそう言えば、エクセラは小さく頷いて見せた。




























そして、日曜日になった。

「今日は仕事、無かったんじゃないの?」
「……悪かった」

俺の謝罪に、エクセラは盛大な溜め息を吐いたらしく、それが電話越しの俺の耳に届いた。

「…………何時」
「?」
「何時頃に終わるの?」
「!6時には終わる」
「…じゃあ、待ち合わせしましょう?6時半に、よく2人で行ったカフェで」
「ああ、分かった」
「言っておくけど、遅刻していいのは1時間までよ」

それ以上は待たないわ、エクセラはそれだけ言い残すと電話を切った。

(6時半にカフェで、か……)

それには必ず行かなくてはならない。エクセラに不満を抱かせたのは、紛れもないこの俺なのだ。それならば、その不満を取り除いてやるのもこの俺だ。
そして、仕事に取り掛かった。





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