novel2
□ついばむチェリー
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「可愛らしい事ばかり言うな」
「あら、可愛かった?」
体ごとこちらを向いているアルバートの厚い胸板に擦り寄り、そう問い掛けると、アルバートは私の背に腕を回した。
ふと肌に直接、胸板が触れた。見ればアルバートの服のチャックが胸板の下辺りまで下がっている。
(逞しい体……)
よく鍛え上げられた胸板にキスを落とした。途端にぴくりとアルバートの肩が小さく跳ねたのが分かった。
「……誘っているのか」
「そんなんじゃないわ。ただ、貴方に触れたかったの」
「ククク…触れるもなにも、こうしてベッドの中で俺に抱き締められているのに、か?」
「いいじゃない、別に」
そう言って、体を反転させ、背中を向ければ、先程よりも強く後ろから抱き締められた。
「お前は俺を煽るのが上手いな」
抱きたくなる、笑いながらアルバートが言った。
「だが…お前がその気ではない」
「そうね」
「それなら……」
横を向いていた体が、倒され、背中がベッドに沈んだと思えば、私の目の前にはアルバートが居た。私に覆い被さるアルバートの双眸はギラギラと光り、獲物を狙う獣のそれと酷似している。
「お前をその気にさせるまでだ」
「まだ日が高いわ。したいなら夜にしましょう?」
「何を今更……」
「夜だったら、私だってその気になっちゃうわ……」
吐息を含んだ艶っぽい声で囁くと、アルバートは私にキスを1つ落とし、ベッドを降りた。そして、スタスタと寝室を出て行こうとする。
アルバートはドアに手を掛けると、不意にこちらを向いた。
「今夜は…すぐに眠れると思うなよ」
それだけ、私に言うとアルバートは寝室を出て行った。
(……明日はきっと寝不足ね)
小さく笑い、ベッドから抜け出しアルバートの後を追った―――。
午前1時頃。
「はっ、あ、ぁん…はぁ、アル…バート…はぁ……もぅ、ダメ…あぁっ」
「ダメ、ではないだろう?」
「ンっ、あ、はン、ひあ…も、許して…っ…」
「それは出来んな」
「あぁ、あんッ、あ、あああぁッ……っ!」
「まだだぞ?もう1回だ」
「えっ……あ、ん…」
漸く私が眠りに就いたのは、それから1時間後の事。
これは私から貴方へのご褒美みたいなものね。