novel2

□ついばむチェリー
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真っ白なシーツと柔らかく私の頭を包み込む枕、体を覆う肌触り抜群の毛布。
どうしてもこの誘惑に打ち勝てない。ベッドから出たくない。目を開きたくない。
今日は、朝からやたらと肌寒い。もう桜も咲き始めているというのに、この寒さは何なのだろうか。

(……アルバートさえ、居てくれたら……)

こんな所からすぐに出ていくというのに、アルバートは生憎の不在。いつもなら、私が目を覚ませばキスをして頬を撫でてくれるのに。その唇が、手が、何処にもない。
思わず深い溜め息を吐いた。
アルバートはまだ戻っては来ないのだろうか。

(…アルバートが居ないなら起きる意味がないわ)

また1つ溜め息を吐いた。あとどれくらいで戻って来てくれるのだろう。今日中に戻って来るだろうか。それとも、明日になってしまうのだろうか。
私が1人目覚めてから2時間が経った。2度寝してしまおうと思い、目を閉じ、体を縮こませる。すると、何やら寝室のドアが開かれた。

(誰かしら……)

薄く目を開けてみると、明るかった部屋が暗くなっていた。驚いて目を完全に開くと、部屋が暗くなったのではないと知る。

「…アルバート……」

ポツリと名前を口にすれば、徐々にアルバートの顔が私の眼前まで迫ってくる。自然と目を閉じれば、唇に柔らかな感触を感じる。続いて感じたのは、優しく頬を撫でるゴツゴツとした手。思わず頬が緩む。

「今、起きたのか?」
「ふふっ…違うわ。2時間くらい前に」
「ずっとベッドに居たのか?」
「だって、起きたら隣に貴方が居ないから…」

寂しかったのと甘えるような声で言えば、アルバートは口角を上げ、私の隣へ潜り込んだ。





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