novel2

□へたれ彼氏
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ソファに腰掛け本を読んでいると、不意にアルバートが私の隣へ腰を降ろした。それをチラリと横目で見た。

(あら……?)

やけにアルバートまでの距離が遠い気がする。いつもなら私が躊躇いもせず、すぐ隣に座るからだろう。私はその距離に違和感を感じた。

(これぐらいが普通、かしら……)

そう思い、手元の小説へ視線を戻した。すると、視界の端でアルバートが動いたのが分かった。横目でアルバートを見れば、何やら少し距離が縮まったような気がする。

(近付いて来てる…?)

試しにもう1度手元へ視線を戻してみれば、アルバートが座り直すように腰を上げ、少しばかり私に近付き、腰を降ろす。

(普通に来れば良いのに…へたれねぇ)

そんなアルバートに笑みを零し、本を閉じると、それをテーブルの上に置いた。そして、アルバートの方へ顔を向け、自分のすぐ隣を右手で軽く叩く。

「ほら、アルバート」

そう言えば、アルバートは素直に近付いて来た。
だが、後20センチ程で密着するという所で、アルバートは動きを止めた。

「……アルバート?」

不審に思い、アルバートの顔を覗き込めば、僅かに顔が赤い。

(まあ…へたれすぎて困っちゃうわね)

不意にアルバートの腕を掴み、力を入れて思い切り引き寄せれば、突然の事で反応が出来なかったのか、そのまま私の方へ倒れ込んだ。肘掛けに背を預け、アルバートを抱き締めた。

「エクセラっ…!」

アルバートの頭を自分の胸に押さえ付け、体を起こそうともがくアルバートの後頭部を優しく撫でてやれば、漸く観念したのかアルバートは動きを止めた。

「貴方がそんなだから私がこんな事するしかないのよ?」
「〜〜〜〜っ!!」
「アルバート?」
「っは!!お前…俺をっ、殺す気かっ!」

どうやら私の胸に埋もれて、息が出来なかったようだ。

「あら、ごめんなさい?」

謝罪の言葉を述べ、アルバートを解放するが、アルバートは一向に離れない。そればかりか、私の背に腕を回して抱き締めた。

「ふふふっ。珍しいこと」
「……いつまでもへたれ等とは言わせん」

アルバートの言葉に思わず目を見開いた。





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