novel2
□イチャイチャしたいの
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―――船首甲板にて。
エクセラは先程から、何かをじっと見つめている。その視線の先に目をやればそこには、レベッカとビリーが居た。2人は、互いの指を絡め、体を密着させて、見つめ合っている。そして、何やら会話が耳に入ってきた。
「ビリー」
「レベッカ」
「ビリー…」
「レベッカ…」
互いの名前を呼び合い、時折唇を合わせる。端から見れば、唯のバカップルだ。
不意にエクセラが俺の方を向いた。その顔は僅かに微笑んでいる。
「アルバート」
エクセラは俺を呼び、レベッカ達を指差した。
(……まさか……)
「私達もアレ、しましょ?」
俺の予想は的中した。
「あんなバカップルじみた事を、か?」
「そうよ」
エクセラはそう即答し、俺の胸板に手を添え、体を密着させた。そして、10数センチ下から上目遣いをして見せる。
「アルバート」
エクセラが愛おしげに俺の名前を口にした。だが、俺は一向にエクセラの名前を口にしない。
「…アルバート」
再度俺の名前を口にすると、右手をゆっくりと上げた。
「アルバート…?」
エクセラの右手には、俺が投与している薬があった。
(俺を脅す気かっ……!)
「…………エクセラ」
小さく名前を口にしてやれば、エクセラは目を輝かせた。
「アルバート…」
「………エクセラ…」
「……アルバート…」
エクセラのうっとりとした目を直視していられず、すっと視線を外すと、エクセラの表情から笑みが消えた。
「……エクセラ…?」
「……もういいわ」
「何……?」
ポツリと呟かれた言葉に思わず目を見開いた。
「もういいって言ったのよ。…そんなに嫌ならはっきりそう言えばいいじゃない」
エクセラは俺の胸板に添えていた手を下ろし、密着させていた体を離した。そして、俺に背を向けるとそのまま歩き出した。突然の事に俺の頭がついて行かず、その背を見つめたまま硬直してしまった。
暫くし、やっと状況を理解した頭が動き出し、エクセラを追えと体に命令を出す。だが、肝心のエクセラが見当たらない。次第に焦りだし、冷や汗が頬を伝った。
(俺としたことがっ…!)
コンテナが積まれ、入り組んだ道。ここから、何一つ手がかりの無いエクセラを探し出すことは難しい。一先ず、高台に向かい、高い所から隅々を見渡してみる。
(どこだ……)
全神経を集中させて、エクセラを探す。