novel2
□束縛彼女で5題
2ページ/6ページ
《好き、大好き》
―――カチャ…
「アルバート?………此処にも居ない…」
朝からずっと探しているのに、何処を探してもアルバートが見付からない。
(何処に行ったのかしら……)
思わず溜め息を1つ吐いた。
朝からアルバートに会っていない。彼に触れていない。唯それだけの事なのに、何もやる気が起きない。
(私の栄養源なのに…)
今すぐ抱き付いて、話したい。だが、肝心のアルバート本人が居ないのでは話にならない。また1つ、溜め息を吐いた。
アルバートが部屋に居ないとなると、他に宛がなくなってしまう。すっかり肩を落とし、部屋を出た。
(何処なの…?)
諦めかけたその時、微かに足音が聞こえた。
(アルバートかしら?)
足音のする方へ、誘われるように歩き出した。
少しずつ足音が大きくなってくる。ふと、通路の先へ目をやった。
(……あ…)
見慣れた黒ずくめの広い背中、紛れもなくあれはアルバートだ。自然と早足になっていく。コツコツとピンヒールが床を叩く音が、通路全体に大きく響き渡る。
(あら……?)
不意にアルバートが立ち止まった。これは好都合と、距離を徐々に縮めていく。そしてあと3メートルという所で、ゆっくりとアルバートが振り向いた。
「……エクセラ」
「!…アルバート」
躊躇いもせずに、アルバートに抱き付いた。
「どうした」
「…何でもないわ。ただ、貴方に会いたかったの」
「…そうか」
「ええ」
私の背にアルバートの腕が静かに回され、抱き締められる。
「…アルバート」
「何だ」
「ふふっ…好きよ。傍に居て?」
「駄目だ、と言ったら?」
「貴方が"分かった"って言うまで、離さないわ」
「フ…"分かった"」
「ふふふ…」
そして、いつものように私はアルバートの隣を歩き出した。
今日も、私の傍に。