novel3

□愛してた、今もまだ愛してる
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私は思い切り頭を振った。ネガティブな思考を振り払いたかったからだ。
盛大な溜め息を吐いてソファから立ち上がり、寝室へと向かった。アルバートの家から持ってきた私物を整理しようと思ったのだ。
寝室の床には、大きなボストンバック、キャリーケース、小さな段ボールなどがあり、それらには全て、ぎっしりと私物が詰め込まれている。一ヶ月も放置していたのだから、乱暴に詰め込んだ服はきっと皺だらけだろう。私は取り敢えず、小物類から整理していくことにした。
小さな段ボールに貼られたガムテープを剥がし、中を見た。時計やら指輪やら、ブレスレットやらを一つずつ取り出し、ジュエリーケースへしまっていく。そして、段ボールの中身が少なくなり、底が見えてきた頃。

(あら?この腕時計はアルバートの……)

どう見ても男性物の腕時計が底の方に入っていた。しかも、それは私がアルバートの誕生日にプレゼントしたものだった。

(…後で、渡しに行けば良いわよね)

そう思い、その腕時計を手首に通した。どこかに忘れてしまわないように。
それから暫く整理をしていて、あるものが無いことに気付いた。
あの懐中時計が無いのだ。ガラスは割れてしまって、時計も止まってしまったけれど、あれは私にとって、とても大切なものなのだ。あれはアルバートからの最初で最後のプレゼント。私はそれが嬉しくて肌身離さず持ち歩いていたはずなのに。

(きっと置いてきちゃったんだわ…)

私は少しばかり悩んだが、アルバートの家へ行くことを決意した。





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