novel2
□キス魔
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「エクセラ」
「なあに?」
アルバートに抱き寄せられ、ふと顔を上げれば、軽く口付けられた。
「…キス、したかったの?」
「ああ」
そう返事をしたアルバートの視線は、私の口元へ向けられている。1度切りでは、満足出来なかったらしい。
(まぁ、私からはしてあげないけどね)
するりとアルバートの腕から抜け出し、部屋にある本棚へと近寄った。本の背表紙を指でなぞり、本を探す。
目的の本を見付け、それを取り出して、振り向いた。
「きゃっ…!」
すぐ目の前にまで、アルバートが迫って来ていた。
「もう、脅かさないで」
ドキドキと脈打つ胸を押さえ、そう言った。すると、顔の両脇にアルバートの手がつかれた。そして、徐々にアルバートの顔が近付いてくる。
あと僅かで唇が触れるという所で、部屋のドアがノックされた。アルバートを押し退け、すぐにドアへと向かった。
ドアを開ければ、フード姿の人物が立っていた。それが静かに、1通の手紙を差し出す。私がそれを受け取ると、ドアの前から立ち去っていった。
(手紙……)
ドアを閉め、振り向こうとして、ピタリと動きを止めた。
ドアには私のものではない影があった。それを見て、アルバートが後ろに居るのだと分かった。
「……エクセラ」
一向に振り向かない私に、アルバートは痺れを切らしたらしく、肩を掴んで私の体を反転させた。すぐさま唇を塞がれ、舌が口腔へと侵入する。互いの舌を絡め合えば、どちらのものともつかない唾液が顎を伝った。
「ふっ……ん…は……ぁ、ん…」
「…………」
「…ん…んっ…んん……っ…」
(しつこいわね……)
執拗に舌を絡められ、まともに息が出来ない。隙間を開けて息をすれば、アルバートは私の後頭部を大きな手で押さえつけた。
アルバートの服を握り締め、必死に口付けに応える。だが、さすがに息苦しくなり、厚い胸板を叩く。
「んっ…んん゙っ!……っは…!」
漸く口付けから解放され、逞しい体に凭れかかった。
(立って、られない……)
足に力が入らず、今にも倒れてしまいそうだ。だが、アルバートは尚も私に口付けた。震える足に追い討ちをかけるように、口腔を蹂躙される。
(もう、ダメ……!)
全身の力が抜け、その場に崩れ落ちてしまう。アルバートはそんな私を即座に抱き上げた。私を横抱きしたままソファへ向かうと、腰を降ろした。
「そんなに良かったのか?」
「……貴方がしつこくしてくるからよ」
「ククク…仕方ないだろう?」
「?」
「……お前が愛しいからな」
そう耳元で囁かれ、私の顔に熱が集まった―――。
これでも、しつこいヒトは嫌いなのよ?