novel


□今夜の星が流れたら
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「ドールだって悩んでた割に、私と同じこと書いてるじゃない。」
「一応…ほら、僕は平和の象徴らしいし」
『いつまでも平和でありますように』と書かれた青い短冊を取り返すと、ドールは肩を竦めた。
「で?何、迷ってたの?」
「何、って」
何気なくかけられた質問に、らしくもなく動揺してドールは言葉を詰まらせる。

ドールも書いてよ、と短冊を渡され文句をぶつぶつ言いつつ何を書こうか、それこそマテリアの料理下手が治るようにとでも書いてからかおうか
と思案していた時、ふと目に入ったのは隣で歌を口ずさみながら飾りつけをするマテリアの姿。

いつの間にか、『いつまでも』なんて無意識に書いてしまっていた。
手先が人一倍不器用なくせに、折り紙で難しそうな飾りを作っては失敗している彼女をぼんやりと見ていて、気が緩んでしまったのかもしれない。

(いつまでも、一緒にいられますようにだなんて)
書ける筈がない。それで続く言葉に迷っていたのだった。

「…マテリアの料理が、せめて飲み込めるくらい美味しくなりますように、って書こうか悩んでたんだよ」
「の、飲み込めるに決まってるじゃない!…食べ物なんだから」
案の定、不自然な間に気づかずに怒り出すマテリアを見て、ドールはほっと胸を撫で下ろした。

「これ以上鍋を破壊しませんように、の方が良かった?」
「良くない!」
調子に乗って、いつものように畳み掛けると、思い当たる節がありすぎるマテリアは、顔を真っ赤にしてもう知らない!とくるりと背を向ける。

「…大事な願い事っていうのは、人に言わない方が叶うって言うからね」
「え?」
小さな声で付け加えると、ドールは問い掛けを遮るように、手を伸ばして自分の短冊をかけた。
「…ほら、これシビルが書いたやつじゃないかい?」


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