500ヒット記念小説集

□春
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「大丈夫ですか。」

私は女の肩にふわりと布団を掛ける。

「はい。」

女はこちらを向きにこりと微笑み、さらに口を開く。

「私退院したらやりたい事がたくさんあったんです。

もう一度あの丘に行きたかったんです。

もう一度桜を見たかったんです。」


女の微笑む顔に寒空に浮かぶ月の光が差す。
その光が頬に伝う一滴をきらりと光らせた。
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