LucianBee's

I am alone in El Dorado.
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愛を囁くのに黄金はいらない
恋の成就に宝石はいらない



I am alone in El Dorado.



ついにやった。
リハーサルを行うために集ったステージはアンジェリカ・アシュワンの手にかかり、さながら黄金郷と化していた。

「うぉーすげー! さすがアンちゃん!」

金魚のように口をあんぐり開け、ROMANXIAリーダー、ヴァンが叫ぶ。
辺り一面が黄金のせいか、瞳がキラキラと輝いている。

「ふぅ、やっと私にふさわしいステージになったね。アハ」
「華美、好感」
「さ、ささささすがは、アンジェラくん」

ROMANXIAのメンバーが一様にアンジェラを賞賛する中、

(ありえねぇ、正直、ありえねぇ)

ジェシーは内心、冷や汗をかいていた。
別段、黄金が嫌いなわけではないが(どちらかといえばシルバーの方が好きだが)ここまであると目も覚める。
しかし、これほどのことを簡単にする財源が恐ろしい。
そして、

(なんでお前らは普通な顔してんだ!)

黄金のステージをごく当たり前に受け入れているメンバーが怖い。
だが、よくよく考えてみれば、有名政治家、大統領、マフィアの首領、貴族、ドバイの首席、そうそうたる面々の息子たちなのだ。その金銭感覚はそうとうに狂っているのだろう。
そうでなければ普段からバーガーの塔を築いたり、黄金の箸を持ったり、簡単にホテルの部屋を改造したり、限定品フィギュアを4体買いしたり、ましてやステージを黄金に染めたりはしないだろう。
いったいゼロがいくつ並ぶ所業なのは聞かずとも、アンジェラの隣に立つ秘書の眉間のしわを見れば悟れる。
ジェシーは素直にステージに感動できない己の一般的な金銭感覚を恨んだ。
イギリスのみならず全世界で有名なロックバンドボーカリストの息子とはいえど金が有り余っているわけではない。
家こそ通常より広いかもしれないが、暮らしはいたって普通だ。
一食五百万以上かかる宝石料理を見たときは卒倒しそうになった。

(俺が変なのか?……)

ジェシーはこの黄金ステージ飲み込まれぬよう、そしていつか同じように黄金にされてはたまらないと愛用のギターを握り締めた。


I am alone in El Dorado.
(黄金郷に独りきり)





PCサイトより転載。
ジェシーだけは結構普通っぽい 。
というか、残りの面々がセレブ過ぎる。



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