LucianBee's

Calling
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ジャパンから常識外れの電話が来た
俺の小学校時代からの友人が言った



Calling
Fry over the long long difference time.



「ハブキングってなんだ」

ミネラルウォーターのペットボトルを手で弄びつつ、ジェシーは言った。
それはジャパンから9時間の時差を乗り越えてかけられた電話の主が作った言葉なのか。それともジャパンでは普通に使われているのだろうか。だが話の流れから、おおよその意味はわかった。

「あー、ハブってわかるか?」
「毒蛇」

細胞レベルまでROCKに染まった彼に聞いたのが間違いだったのか。それとも常に女に囲まれ、話題の中心に居続けるジェシーには無縁の言葉だったのか。
お門違いの(ある意味正答ではあるが)答えを出したジェシーに俺は正解を教える。

「簡単に言えば…仲間外れってことだな」
「仲間はずれ、か」

アイドルグループなんてカメラの回っていない所では仲が悪いと思っていたが、どうやらジェシーが所属するROMANXIAは違っているようだ。
個性の塊のようなメンバーが六人集ったROMANXIA。ぶつかり合って喧嘩もするが、その分仲も良くて、携帯の番号も交換すれば、何かにつけては連絡を取り合い、自国にメンバーを招いたりしている。
ジェシーから連絡することは少ないし、ROMANXIAに戻りたいということも言わないが、メンバーを嫌っているわけではないということはわかる。
何年、彼の友人をやっていると思っているんだ。彼が本心を口にしないことくらいはとうにわかっている。

「で、いいんじゃねぇ? レース観戦、行ってやれば。仲間はずれ、嫌だろう?」
「……バカにしてんのか」
「都合よくライブの予定もないし」

俺がそう言うとお気に召さなかったのか、顔をふいとそむけてミネラルウォーターを一口飲む。

「ライブがないからって暇なわけじゃねぇ。練習とか、曲作りとかなんでもある」

彼のヒエラルキーの上位に占めるものは一にも二にもROCK。その優劣はよほどのことがない限り変動しない。

「なぁ、ジェシー。お前は俺に何を言ってもらいたいわけ?」
「べ、別に、何も……迷惑千万なヤンキーの話をしただけだ!」

まったく素直じゃない。昔からそうだ。本当のことは口にしない。反対の言葉でごまかす。それがROCKだと、思い込んでいる。

「わかった。最初に聞けばよかった。ところでお前は行きたいのか、行きたくないのか、どっちなんだ?」
「……」

ジェシーがわざとらしく俺から視線を外した。

「…………行きたくない事も、ない」
「よし、じゃあ、行って来い」
「うるせぇ」

ジェシーは平常の不満顔に戻り、ギターをいじりだした。
途切れ途切れに聞こえてくるその音が、どことなく嬉しそうに聞こえると言ったら、きっと君は怒るんだろうな。


Fry over the long long difference time.
(その長い長い時差をとびこえて)




PCサイトより転載。
オルソンとジェシー。ヴァンM2の時の話



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