LucianBee's

その首筋にキスをした
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※唐突に夏祭り





その首筋にキスをした



「……いい加減、機嫌治してくんねぇ?」
「…………」

猛暑も猛暑。気象庁が酷暑なんて単語を作り出すくらい暑い日。それでも夕刻に近づけば、日が落ちるので少しはマシになる。が、要するにどちらがマシかという話なので、どちらも暑いのに変わりはない。夜になっても風は少なく、じとっとした空気がまとわりつくようだった。
でもどれだけ暑くても、今日は特別だ。
今日は−−夏祭り。
日本の習慣に馴染みのないジェシーを呼んで一緒に夕涼み+縁日+花火見物と洒落込もうとしたのだが……

「−−マジで、ごめんって」
「……」

オレの先を行くジェシーが立ち止まって、浴衣の襟を正した。
やっぱり気にしているようだ。
オレがつけた………キスマークを。


****


金魚すくい、わなげ、綿飴、かき氷、リンゴ飴、チョコバナナ。見るものすべてが珍しいといった顔のジェシーと縁日を巡った。うちわを片手に、暑かったけど妙に気持ちよくて清々しかった。
夜ってのもあるし、ライトアップされた縁日の、魔法みたいな変な感覚に捕らわれてふわふわしていた。気持ちが高揚していた。はぐれるなよと、そっと差し出した手をお前が嫌がらずに握ってくれたってのもある。
花火が始まる前に、調べておいた神社の境内のベストスポットにジェシーを案内して、かき氷(イチゴ味)をお供に花火を見ていた。
上がる花火、激しい音と、炸裂する光。
激しい音は、オレの心臓の鼓動とよく似ていて。赤、青、黄色、白と炸裂する光は、オレの隣のお前をどうにも扇情的に彩る。
気がついたら、花火なんかそっちのけでずっとお前を見ていた。
気がついたら、了承も取らずに、お前にキスしていた。

最初から狙っていたわけじゃない。不可抗力というものだ。
だって、慣れない浴衣を着たジェシーの首筋というかうなじというか……とにかくエロかったんだ。あれに何もせず黙って見ていたなんていったら、それはとんでもないチャンスを逃している。目の前で宝箱から金銀財宝見えてるのに、金貨の枚数だけ数えて帰ってきた−−それくらいだ。チャンスの女神は前髪しかない。後ろからはつかめない。だからオレは逃すことなく、チャンスを有効活用した。
その結果が、これだ。
ジェシーは首筋に花が咲いたようなキスマークを、オレは左頬に右ストレートを貰った。


****



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