LucianBee's

歓声に溢れる此処で会いましょう
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※唐突にパロディ






歓声に溢れる此処で
会いましょう




「ほら、ジェシー。あそこ、ヴァンが」

イスを後ろに向けて、俺の机に両肘をついていたアンナが教室から、窓の外を指さした。
読んでいた雑誌から目を離し、窓から見下ろすと確かにバスケコートでは制服の上着を脱いで、バスケをするヴァンが。
華麗なドリブルに、狙いすましたシュート。まるでそうなることが決まっているように、ボールはゴールをくぐり、ネットを揺らした。
とたんに女子の歓声。
キャーキャーとあいつを称える高い歓声に耳を塞ぎたくなった。

「あいつ……人気あるのか?」
「知らないの?女の子に優しいし、運動神経抜群だし……」
「顔もいいから、か?」
「ふふふ。ちょっと当たり」

ゴールを通って落ちたボールがコートに弾む。ヴァンはそれを片手で拾い上げ、額に流れる汗を拭った。
高くあがる女子の歓声。
それも決まりきってるみたいで、あいつは軽くギャラリーに手を振ってあしらった。

「ヴァン……アイドルみたい」
「あぁ、はいはい」
「……ジェシーって、ヴァンの話すると機嫌悪くなるよね」
「……なってない」
「やっぱりそうだ」

俺の顔を伺うように、アンナがこちらを見る。

「何?ヴァンのこと嫌いなの?」
「別に。ただの、友達だ」
「……まぁ、そうなのかな……うん。でも、何か違うなぁ」
「何が」
「友達っていうより−−もっと特別な感じがする」

アンナがにっこりと笑った。
なんだか、全部見透かされているようだった。
その目から逃げるように窓の外に目をやると、ヴァンが投げたフリースローが、きれいにゴールに吸い込まれた。
ひときわ大きな歓声が教室まで届く。

ヴァンがこちらを見上げた。

−−目が合った。

手を振りながら、何かを言っているのか、それとも口パクなのか。とにかく、せわしなく口を動かしていた。

『      』

一言一言区切ったような、その短い言葉を口の動きから読みとってみる。

「ヴァン、頑張って」

アンナが手を振り返した。
そして巻き込むように俺の腕を掴む。

「ほら、ジェシーも振って」
「何で、そんなこと」
「返事でしょ、返事」

ヴァンはまだ、こちらに手を振っている。
………返事を待っているのだろうか。
先ほどの、言葉の返事を。

「ね?」
「………わかった」

あいつに見えるように、軽く手を振った。
そして、口パクで返事をする。

『     』

俺の返事が通じたのか、満足そうな顔をしたヴァンはゲームに戻っていった。
再び、ボールの弾む音と、ギャラリーの歓声が聞こえる。

「ねぇ、ヴァンに何か言った?」
「別に」
「言ったよ。絶対言った。ねぇ、何を言ったの?」
「返事」

その答えにアンナが不満げな顔をした。
俺はその鼻を摘んでやった。

「ひゃ、な、なにするの!」
「何でもない。気にするな」

アンナは俺の机にうつ伏せになって、足をぶらつかせた。

「絶対、何か特別感がある。つながってるというか…何て言うのかな……」
「残念だが、ない」
「乙女の勘は当たるのよ」
「はぁ」

実際、アンナの言ってることは当たっていた。

−−俺たちはデキてる。

でも、それを知らせてやることは……やっぱり出来ない。

机に頬杖をついて、ヴァンを見た。
仲間からパスをもらい、ドリブルで敵をかき乱し、縦横無尽に走り回る。
そして時々、こちらを見てはやけにまぶしい笑顔で口を動かす。



『だ い す き』



だから、俺もできる限りそれに答えてやるんだ。



『お れ も』



歓声で溢れるバスケコートで交わされる、俺たちだけの秘密の会話。




end



ヴァンジェシ学生パロ。
といっても、あんまり学生の意味がない話になってしまたww
アンナちゃんをクラスメイトとして出せたのが、一番の満足。



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