LucianBee's

二人のAnniversary
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好きすぎて好きすぎて好きすぎて
もう、頭の中がおかしくなりそう



二人のAnniversary



五線譜の上を淀みなくペンが進んでいく。
学生時代の音楽の成績が悪かったオレには、五線譜の上の音譜なんてオタマジャクシのダンス。せいぜいドの音がわかるくらいだ。
それでもオレは五線譜から目が離せない。
もっと正確にいうと、五線譜に音符を書いているジェシーの手から。
大きくてしっかりしてるけど、繊細な作業だって得意。言うと怒るけど、お嬢様みたいに白い手。

「なぁ、ジェシー」

ジェシーは俺の声が耳に入っていないようで、サラサラと手を動かしている。細い目を彩るまつげがぴくぴくと動く。薄い唇が紡ぐ、心地いいメロディにトーン。ついつい聞き惚れてしまう。ギターを鳴らして音程を確かめたり、リズムを口ずさんだりして。あとはひたすら五線譜との格闘。周囲の音が一切耳に入らなくなる。作曲中はいつもこうだ。

「あのよ」

聞いていないことは知っているが、言いたいことがあった。

「もしも……オメェが女だったらよかったのにって思ったことがあんだ」

その手が細く白い、女のものなら。
オレは間違いなく取っていたし、たぶんキスして、ついでに告白して。

「ちゃんと付き合えるし、結婚だってできる……でも、それって違うってわかった」

もしもジェシーが女だったら。
オレたちは間違いなく、出会っていなかった。この広い世界で、互いに互いを知らず、一生を終えていた。
もしもオレがROMANXIAに選抜されていたとしても。オレとオメェは住む世界が違っていて、出会えなかった。
それじゃあ、意味がない。
出会って、恋に落ちて、結ばれなきゃ、意味がない。
たとえ、たどり着く先がハッピーエンドじゃなくても、出会い<プロローグ>がなければ物語は始まらない。

「……だからさ、男に生まれてきてくれてありがと」

オレと出会ってくれて、ありがとう。

オレと恋してくれて、ありがとう。

オレと結ばれてくれて、ありがとう。

「誕生日おめでとう」

ジェシーが顔を上げて、やっとこちらを見た。心なしか、頬が赤い気がする。

「……shit、言いたい放題言いやがって」
「聞いてたのか。聞こえてないと思ってたのに」
「聞こえてはいる……反応しないだけだ」

曲が仕上がったのか、五線譜をオレに押しつけてきた。くしゃっと紙が音を立てた。

「んじゃあ、オメェの仕事も終わったし、誕生パーティーでもすっか」
「はっ、ガキじゃあるまいし」
「ガキでもいいじゃん」

オレがにんまり笑うと、呆れたようにジェシーも少し笑った。それがすごく嬉しかった。

「ハッピーバースデー!ジェシー」
「……お前、発音下手だな」

そしてどちらからともなく、唇を重ねた。






来年も一緒に誕生日を祝おう。
今年から、誕生日は二人のAnniversary<記念日>


end



ヴァンジェシ。甘め。
本当はジェシ誕に間に合わせたかったけど、無謀すぎでした(笑)



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