LucianBee's

いばらひめ
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その茨が周囲を拒み、貴方を守る
その茨が甘言を与え、自由を奪う



いばらひめ



「それでは、V回します」

Mが冷静にそう言うと、目の前の機械を操作した。暗い部屋にホワイトウィングが入手したという映像が流れ始めた。
ROMANXIAとして召集されたときの姿。それと普段の姿。
食事を取る、学校に行く、バンド仲間とたわいない会話、ギターの練習。
ダーサインに変えられたあろう食の思考や服や髪のセンスを抜けば、そこに映っているのは、ごく普通の"男子"。
なのに。

(まるで茨に守られているみたい)

それが、私の彼<ジェシー"KID"スクワイア>に対する第一印象だった。
棘が生えたようなROCKテイストの服や、天にそそり立つロングホーンも、その印象に一役買っているのだろう。
だけどそれ以上に、彼のまとっているオーラが刺々しかった。
他人をことをまったく信頼していないような冷たい瞳。周囲に人を寄せ付けない冷たいオーラ。彼の放つ皮肉が、毒舌が、暴言が。その全てが彼に冷たく刺々しい雰囲気を与えていた。

「………」

私はどうも絶望的になっていた。
こんな彼が私を――改造を受け入れてくれるのだろうかと。
悲観的になっていた。
彼は変わることを望んでなどいない。
今のスタイルが好きで、それを貫く自分自身がたとえようもなく好きなのだと。
映像から、資料から容易に読みとれた。
私なんかが、入り込んでもいいの?
入り込まれることを、彼は望んでいるの?
彼はきっと、介入など望んで――

「――あ」
「……どうしたの」
「Aちゃん?」
「あ、ううん。ごめん、何でもないの」


今、


彼の顔が、


――少し、悲しげに見えた。


唐突に映像は途切れ、暗い部屋にブツンという音が響いた。後に残ったのは黒い画面だけ。

「………彼を助けられる?」
「もちろんさ」

Qが言う。
横でMも力強くうなずいた。

「――貴女が救うのよ」

私は力強く、拳を握りしめた。
おせっかいでもかまわない。
一方的でもかまわない。
自己中でもかまわない。
側にいたい、救いたい、助けたい。


茨の中に、飛び込んでいく覚悟が出来た。





end



ジェシーとA
逆転いばら姫。乙女ゲーの主人公はみんな勇敢な姫様なのです。はい。



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