LucianBee's

受け止めて!ハニーパイ
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パイが、きれいな放物線を描くように空を飛んだ。そして、吸い込まれるように、お前の顔に落ちた。



け止めて!ハニーパイ




「なぁまだ怒ってる?」「……」「つまづいてさ」「……」「だから悪かったって」「悪かったと思ってるなら」「なら?」「ここから出ていけ!」「………」

ジェシーの声がくわんと反響して尾を引くように残る。
個人部屋の、それなりに広い浴室。
その湯船に大の男二人。

「無視するな、聞け」
「出ていったらお詫びにならないだろ」
「これのどこが、お詫びだ」

それは、さっきの話。
オレはクリームハニーパイを、まるでコントの一幕のようにジェシーの顔にぶちまけてしまったのだ。
顔から髪から服まで。クリームやらなにやらで汚れてしまったジェシーはお風呂タイム。それにオレもお詫びという名の便乗。
嫌がるお前の服を脱がせ、浴室に放り込んだ。用意した風呂は、日本人なら誰もが一度は憧れる泡仕様で。つまり泡風呂。オレの心もウキウキだ。
狭い湯船で泡まみれで、密着する二人。

「オレと一緒にいられて幸せだろ?」
「出・て・い・け」
「ははは」

指を丸めて息を吹けば、ほら、シャボン玉が飛んだ。そのシャボンが湯に濡れたお前の髪にぺたりと付いた。
うわ、なんだろう。すごく、指でつついて割りたい衝動。
けれど湯船は狭いし、泡だらけなので。
案の定、身を乗り出したオレは足を滑らせて、お前にのっかるように転ぶ。
バシャーンと派手な水音。水しぶきがお前の顔を容赦なく濡らす。

「fxxk!さっさと出ていけ!!!」
「滑ったんだって………ん?」

気が付くと、急接近。
顔と顔がすぐそこにあって。
体同士もすごく密着していて。
少し動けば……

「ジェシー……」
「ば、バカ、やめろ、なに、触って」

お前の体に触れる。泡のせいでつるつるとした触り心地はかなり、いい。
しかも触れる度にお前が、くすぐったいように甘く可愛い声を上げるからまた、たまらない。
思い切り顔を近づけて、耳たぶを軽く噛んでやると、もう顔は真っ赤。あぁ、本当にかわいいな。

「ヴァ……もう止め……んっ」
「ヤダね」

止まらない、止められない。
このチャンスをモノにしないと。

「せっかくパイ当てたのにさ」
「……fxxk、てめぇ、やっぱり…わざとだったのか!」
「いや、偶然偶然」

でもまぁ、偶然でも、必然でもいいだろ。
さっきはパイ。
今度はオレを受け止めて、ハニー。





end




ヴァンジェシ。
結局、パイに深い意味はないという。
なんだこりゃ。



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