LucianBee's

美食のすすめ
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どうしようもなく、君に目を奪われる


のすすめ


ジェシー"KID"スクワイアの食事風景は、やはり何度見ても耐えられない。
レミィは刺繍の入ったレースのハンカチをそっと口元に当てた。
がっつくというのか。食らいつくというのか。とにかく獣のように食べるから見ている側はたまらない。
しかもその食事には、刺激臭の伴う紫のソースがこれでもかと、かけられている。

「君の食事はまた、すごいね」
「その言葉、そのままお前に返す」

宝石料理なんて正気の沙汰とは思えねぇ。ジェシーは紫のソース−−チョッパーを口の端につけたまま、心底苦そうな顔で言った。

「美しい私には美しい食事が似合うのさ」
「成金趣味にはピッタリだな」

そうしてまた食事を、正確にいえばチョッパーの塊を口に運ぶ。
臭いも壮絶だが、辛さもそうとうきついチョッパー。それを顔色一つ変えず口にするジェシーにレミィは尊敬にも似た感情を覚えた。

「よくもまぁ、食べられるものだね」
「……お前も食ってみるか?」
「冗談!」
「ただの食わず嫌いかもしれねぇだろう」
「まさか……」

レミィはなみなみとチョッパーのかかった食事を見つめた。その鮮やかな紫を眺めているだけで、食欲が減退する。

「いや、駄目だ。食べられるわけが」
「根性ねぇな」
「うるさいよ。だいたいこんなもの人が食べるものでは……」

その言葉に、なぜかジェシーは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。不満げなレミィが文句を言おうとジェシーを見る。と、何かを思いついたように、その口角がニッと上がった。

「……わかった。じゃあ、遠慮なく味見させてもらうよ」

両手を出して。
レミィはにっこりと微笑んで要求した。
味見をすることと、両手を出すことの関連がわからないジェシーは疑いながらも手を出した。
その両手首をレミィはしっかりと掴む。

「はぁ?テメェ、何が目的だ」
「言っただろう。味見だって」

不穏な空気を読み取ったのか、ジェシーが手を振りほどこうと暴れる。
が、そこは鍛えに鍛えた歌劇団のスター。がっちりと掴んだ腕を放さない。

「暴れないで」
「うるせぇ!なにしやがる!」
「何ってただの味見だよ−−」

囁くように言うとレミィはおもいきり顔を寄せ、

「−−ただし。君ごと、ね」

ぺろりとジェシーの口元のチョッパーを舐めとった。
何が起きたのかを瞬時に悟ったジェシーは一気に顔を真っ赤にし、渾身の力でレミィを振りほどいた。

「て、テメェ…」
「辛い……?いや、舌が痛い。味なんてあったもんじゃないね」
「歯ぁ、食いしばれ!!!」

感情のままに殴り掛かってみるが、怒りに任せた拳は軌道が簡単に読まれてしまう。

「よけんなっ!!!」
「だってねぇ」

あまりにもまっすぐだからさ。レミィがおちょくるように、フフフと笑う。
もちろんジェシーはレミィのその態度にさらに腹を立てた。だが、振るう拳はスルリスルリとかわされてまったく当たらない。

「アハ、ごちそうさま。また、機会があったらいただくよ」
「二度と食わせるか!!!」


END


−−−−−
中途半端に終わり。
なんかこの二人、食事話ばっかりだ。

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