LucianBee's

蜂狩りの鷹
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羨望集め輝く華々
求め、群がるは夢色の蝶
狙い、喰らうは闇色の鷹


蜂狩りの


「首尾はどうだい?」

レディXが妙に優しい声色で言った。
私が何度目かの"改造"を終えて帰ってきたときのことだった。
ターゲットは標準レベルのイケ男。
服装にも髪型にも話し方にも気を使った結果か、ターゲットが私を怪しむことは一切なく。
私の勧めるままに、
私の食事を口にし、
あっさりと−−堕ちた。
味気なかったが、最高の感覚だった。

「上々よ」
「それはよかった」

簡単な経過報告を聞き、Xはうれしそうに微笑む。
その口元だけの器用な笑みがどうしようもなく、怖く感じる。
私がDARESIGNに選ばれたときから。
私がHONEY BUZZARDYになったときから。
初めてXに会ったときから。
Xは常に器用に笑い続け、私はその笑みに怯え続けている。
私はXの本当の笑みを知らない。
それだけではない。
DARESIGNの設立理由も。
Xの本当の目的も。
私は−−いや、私たちHONEY BUZZARDYは何も知らない。

「ねぇ、教えてほしいことがあるの」
「おや、何をだい?」
「…DARESIGNって何なの?」

たまらず問いてみる。
しかし、Xは答えない。
沈黙が場を支配する。
聞かなければよかったか。
何も聞かず、何も知らず。
ただ、男という名の花を枯らし、ミツバチたちを狩っていればよかったのか。
しかし、もう後の祭り。
発した言葉は戻らない。

「…なんでもない、ただの組織さ」
「え、えぇ。そうよね」

Xの冷たい突き放すような解答に、話題を終了させたい私は必死で同意した。
怒らせてはいけない、の一心で。

「そして」

しかし、Xは話題を終えないし、変えない。
私は「そして」に続く言葉を息を殺して待っている。



「−−ここは、あんたたちの帰る場所さ」



−−あぁ、そうだ、この人は。
行き場のない私たちをまとめて、
役割をくれて、
帰る場所をくれて、
愛してくれた。
信じてくれた。
存在意義をくれた。
存在価値をくれた。

「そういえば、忘れていたわ」

Xの表情がほんの一瞬柔らかくなる。
まるで遠い昔に見た母の笑みのように。

「おかえり−−私のかわいい息子」





でも、私は忘れていたの。
その感情も、気持ちも、想いも。
全て、偽物だということを−−


END

−−−−−

恐ろしいほど捏造。
レディXがこんなに優しいわけがない。


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