LucianBee's

花見日和
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それは晴れたある日の話





「花見に行こう」
「はぁ?」

花見に行こうと、無理矢理お前の手を引いた。弁当、飲み物に、青いビニールシートを持って、養成所の裏山に生えた桜の木の下に連れていった。
木の下にビニールシートを敷いて、その上に隣同士に座って、二人で桜を見上げた。
満開をすぎた桜は風が吹く旅に散って、オレたちに降り注ぐ。
ちらちら、ひらひら、はらはら、と。
降り注ぐ花びらが、隣のお前の髪に落ちる。ピンク色のハートにも見えるそれを、指でそっと持ち上げる。
それに気づいたのか、お前がこっちを向いた。桜の花にも相まって、とても綺麗に見えた。
正直、限界だった。



気がついたら、お前をビニールシートに押し倒して、キスしてた。



何が起こったんだって顔でオレを見るお前を、上から見下ろして思う。
あぁ、こういうの花よりなんとかって言うんだっけ。違うか……でもいいや。うまく言葉が出てこないし。

「んっ……ふ……も…止め」

止めろと言われて止めれるなら、苦労はしない。
思いが暴走して止まらない。
唇を重ね、舌を絡めて、ジェシーの声も飲み込んで。それでも止まらない。いつまでもいつまでもこうしていたい。
ふいに、肩をドンドンと叩かれて、それでやっとお前の状態がわかった。
名残惜しいが口を離す。
お前は苦しそうに肩を上下させ、大きく息をを吸いこんだ。その息を吸う長さが、きっとイコールでオレのキスの長さ。そんで、オレの愛のデカさ。どうにも誇らしげな気持ちになった。
オレは、こんなにもお前を愛してるんだぞって。大声で叫びたくなった。

「……ジェシー……」
「……ヴァン」

お前の体に手を回して、抱きしめる。
ぎゅっと、もう放さないように。
放したりなんて、絶対しねぇけど。

「チョー好き。喰っちまいたい」
「……恥ずかしいから、外でそういうこと言うな」
「じゃあ、部屋ん中ならいいのか?」
「そういうことが言いたいわけじゃねぇ」

ひらりと落ちてきた花びらが、偶然にもお前の頬に落ちる。それを舌で舐めとってやる。
そっとくわえた花びらはお前への気持ち、ハート型。

「でも、誰も見てねぇし、聞いてねぇし……いいよな?」
「そういう問題でも……ない」
「……いいよな?」
「………ん………あ、べ、別に…」

オレはにんまりと微笑んで、押し倒したお前の手首をそっとつかんだ。
そして、お前の服に手をかけ−−







ぐぅぅぅぅぅぅ………


空気ぶちこわしで、オレの腹が鳴った。

「ヴァン……飯、食うか?」

ジェシーが冷ややかにオレを見ていた。
目のはしにはコックに頼み込んで作ってもらった重箱弁当がちらちらと。

……腹減った。

オレってなんてあれなんだろ。
花より団子?

「………食う」
「なら、どけ」
「はい」

オレはジェシーの上から退いて、重箱弁当のふたを開ける。きちんと区分けされて色とりどりの花見料理が入っている。また、腹がくぅと鳴った。
くそぅ、オレのバカ。もっと朝飯食ってくればよかった。そうしたら、もっといい雰囲気になって、そんで、

「旨そうだな」
「……え?あぁ、そうだな」

とりあえず、欲望は頭の片隅に追いやって、弁当をつまむことにした。





(絶対、リベンジしてやる!)


end



すごく初期に書いた話を引っ張り出してきました。
お花見が書きたかったんだな、たぶん。



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