二次元

□fkmt作品
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『堕ちる瞬間』(佐→カイ)


人付き合いの悪い、取っ付きにくい人。
最初の頃のカイジさんのイメージは、そんな感じだった。
話し掛けても、適当な相槌だけで、言葉を返してはくれない。
いつも何かを気にしているようで、俺らの事を見ているのか見ていないのか、よく分からない顔をする。
正直、嫌いなタイプだった。
人が折角、声を掛けているのに、返ってくるのは曖昧な返事ばかり。
その度に、人付き合いが嫌なら、接客業なんかしようとするなよと思った。
そう思う度に、俺は、カイジさんが嫌いになっていった。
だけど、嫌いになればなるほど、気にかかるもので、気付けば、俺の視線の先にはいつもカイジさんがいて、まともな返事が返ってこないと知りつつ、話し掛けてしまっていた。

「ねぇ、カイジさん。仕事終わったら、一緒にどっか行きません?」
「……断る」

相も変わらず、短い返事。
しかも視線は、掃除用モップの先を見たまま。

「何でっすか?」
「そんな気分じゃない」
「気持ちなんて、後からついてきますよ!ね?いいでしょ?」
「よくない」
「えー、つまんないなぁ。そんなんじゃ、友達無くしますよ」
「別に」

「構わない」なのか「そんなことはない」なのか、そう言ったきり、黙り込んでしまった。
――ちゃんと喋ればいいのに。
男前と言うわけでもないが、そこそこ万人受けする顔なのに、そんな態度をとっていたら、好かれるもんも、好かれるわけがない。

「カイジさんって、絶対損してますよ」
「何処が?」
「え?」

心の中で呟いたつもりが、声に出ていたらしく、真っ直ぐに俺を見つめるカイジさんと目があってしまった。
――こんな長時間見つめあったのって、初めてじゃね?
普段なら、合ったとたん、直ぐにそらされるのだが、今回は違う。
真っ直ぐな、目が俺を刺すように見つめてくる。

「佐原?」
「え?あ、はい」
「はい、じゃなくて、俺の何処が損してるって?」
「あ、あぁ…………さぁ?」
「さぁって何だよ!さぁって!」
「分かりませんよ。なんとなくそう思っただけですし」
「……もう、いい」

カイジさんは、疲れたように溜め息をつくと、視線を再び、モップに戻し、掃除を再開した。
――あんな顔、勿体無くて他人に見せられるわけないですよ。
人を惹き付けるような、真剣な眼差し。
あの目で見つめられたら、男相手でも堕ちそうになる。
いや、絶対に堕ちる。
俺のように。
――やっぱり、カイジさんはそのままでいいや。
居るのかしんないけど、ライバルは居ない方がいいに決まってるから。

                                  ―完―

〜後書き〜
初の佐→カイ話。
佐原がカイジに落ちた瞬間の話でした。
私の中の佐原は、今時のおちゃらけ君。
カイジは、そういった人とは一切付き合いがない、意外なところで純粋な子。
と、いうイメージなので、そういったところが出せるようなものを、書いていければ……と思います。
それでは、また!!

2009/12/01 田村 裕樹。
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