その他

□小さな恋心
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「大野くーん!!」

「ん?ああ、まる子」


最後の水泳対決が終わった帰り道。
まる子が俺のことを呼びながら走ってきた。
俺は足を止め、まる子が追い付くのを待つ。


「何か用か?」

「ちょっと…待って…」


やっと追い付いたと思ったらハァハァと息を切らしてなかなか言葉が出てこない。


「大丈夫かよ?」

「う、ん……あ、ありがとう…」


俺はまる子の後ろに回って背中をさすってやった。
改めて見ると細い。
かなり細い。
って何考えてんだ俺は。


「………」


…いくら「ちびまる子」だからって細すぎだろ。
いつもバクバク食ってるイメージあるけど、何なんだこれ。
それとも女子ってみんなこうなのか?
いや、一部そうじゃないのもいるけど…


「………」

「あの〜…大野くん?もういいんだけど」

「あっ」


まる子に言われ、俺は慌てて背中から手を離した。
するとまる子はこちらに向き合い、ニコッと笑った。


ドキッ!


「…え?」

「ん?」


何だよ今のドキッて…


「…大野くん?」

「え、あっ、いや…」

「?…あっ、今日学校に来れて良かったね!」

「…うん」

「効いたでしょあの梅干し!!」

「梅干し…?」


少し考える素振りをして思い出してみる。
………


「あっ、杉山が持ってきたアレか。そう言えばまる子からって言ってたな」

「思い出した?あれねぇ、わざわざまる子のおばあちゃんに用意してもらったんだよ」

「そうだったのか?」

「うん!大野くんに早く治って欲しかったから」

「っ…!」


またドキッとする心臓。
何なんだよ本当!
顔が熱いし鼓動も早いし…
また風邪引いたか?!


「…大野くんどうしたの?顔赤いよ?」

コツン

「────っ!!」


少し背伸びをして俺のおでこに自分のおでこをくっ付けるまる子。
近い近い!!


「…ま、まる子…」

「んー…熱は無い、のかな」


わからないならやるんじゃねぇ!!
って怒鳴ってやりたかったけど、何かいろいろいっぱいいっぱいでうまく言葉に出せない。


「もしかしたらまだ完全に治ってないのかもよ?今日は早く休んだ方がいいかもね」

「お、おう」

「じゃあね!大野くん!」


それだけ言うと、まる子は手を振りながら行ってしまった。


「………」


一人残された俺。
まだ正体不明の熱さと鼓動の早さは治らない。
頭の中で考えるのはなぜかまる子のことばかりで…


「……まる子…」





(それは小さな恋心。)





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