双狐小咄

□そして僕は生かされる
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吐き捨てるように言うと同時に、ライドウに触れているフツヌシの手が、マグネタイト特有の鮮やかな緑の閃光を発した。
光は一瞬にして全身を覆い尽くし、そのまま音も無く光の粒と化して、虚空に霧散していく。
ライドウの身体を戒める力が消え、その身を貫いていた刃もまた、次々に緑の光に飲み込まれ、散り消える。
フツヌシがいた場所から、ライドウの身体から、携えた刀に付着した赤黒い血錆から、次々に緑色の光の粒が舞い上がり、そして消滅する。
やがて、そこに悪魔がいた痕跡は、跡形も無く消え失せた。
小さく息を吐き、両目を閉じる。握り締めた刀が少しずつ光を失っていく。
やがて瞳を開いた時、ライドウの瞳は深い闇色に戻っていた。
ゴウトの声が聞こえたような気がして、ライドウは振り向いた。同時に、足元に広がる液体が、ぴちゃりと濡れた音を響かせる。
忌々しげにそれを睨めつけると、いつの間にかそこに立っていたゴウトが呆れたように溜息を吐いた。
「悟、お前──」
「悪魔は滅ぼしました。何か問題でも?」
ゴウトの言葉を遮り、有無を言わさぬ口調で畳み掛けるライドウ。
彼がにこやかに笑いながら、刀を握る右手へ僅かに力を込めたのを認めて、ゴウトは尾を伏せて沈黙した。

<了>

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