双狐小咄

□お前をその名で呼ぶ理由
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ゴウトは一つ瞬きをして、考えるように視線を落とした。
──さて、どう答えたものか。
思い悩むその仕草を肯定と取ったのか、ライドウは静かに重苦しい溜息を吐き、ゴウトから顔を背けた。
「雷堂は、彼方の業斗に『雷堂』と呼ばれているのに」
「雷堂とお前は違うし、業斗と俺も違う」
「それはそうですが……」
焼き餅か。そう揶揄するように言ってやると、ライドウは一瞬ゴウトを睨み、そしてすぐにその瞳を伏せて再び溜息を吐く。
「俺には、何が足りないんでしょうか」
呻くように呟いた声は、聞いている方の胸が痛くなる程に痛切な響きを持っていた。
「知識、経験、力、心構え……仲魔。貴方に認めてもらう為には、俺はあとどれだけ尽力すれば良いのか……」
ライドウの左手が鞘を取り上げ、目の高さで掲げ持った刃をするすると収めていく。
ぱちり、と音を立てて刀をその中へ収め切っても、ライドウはその体勢のまま、じっと七星葛葉を見つめて動かなかった。
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