双狐小咄

□越境
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くすくすと笑う。くつくつと笑う。
笑い声が重なって、そして静かになる。
本当は違う。
雷堂。時間。どちらが足りなくてもいけないし、どちらとも満たされているだけでもいけない。
雷堂と、こうしている時間が、勿体無い。
この黒と白と蒼を混ぜて作られた男は、何処まで察しているのだろう。
不意にふわりと甘い香りがした。柔らかく熱い舌が擽るようにライドウの唇をなぞり、そしてすぐに離れる。
ついばむような接吻け。
もっと、とねだるように薄く唇を開いて、真っ赤な舌をちらつかせる。すると、近かった気配がすっと遠ざかった。
何故。怪訝に思って瞳を開くと、見えたのは近付いてくる雷堂の顔で、聞こえたのはことり、というあの音で。
唇が重なって、ライドウはゆっくりと瞳を閉じた。
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