双狐小咄

□夢のあと
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「すみません……取り乱しました……」
うなだれて、ぽつりと呟く。膝の上で固く握り締めている両の拳が、かたかたと小さく震えていた。
「何故泣いている」
「泣いてなんかいません」
「……何故泣いている」
「だから──っ!?」
同じ質問を繰り返す雷堂に、ライドウはきつく眉を寄せて語気を強めた。それと同時に顎を掬われて強引に上向かせられ、言いかけた言葉を飲み込んでしまう。
真っ直ぐな灰眼がライドウを見下ろす。口元は相変わらず引き結ばれていたが、その瞳は優しい光を湛えていた。
「……泣いている」
囁き、ライドウの頬を伝った跡にそっと唇を寄せる。
学帽の鍔同士がぶつかり、そしてライドウのそれが軽い音を立てて落ちた。
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