双狐小咄

□夢のあと
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キィ、と扉が音を立てた。
ベッドの端に座ったままゆるりと顔を上げて、入ってきた影と視線がぶつかる。
「なんだ、まだ起きていたのか」
僅かに口の端を歪ませて言う雷堂に、ライドウは口を開きかけ、そして俯いた。
「……が…い……くて……」
「何だ、聞こえんぞ」
「……雷堂が、いなくて。怖くて」
外套のボタンを外しながら近付いてくる雷堂に、俯いたままもう一度、今度は幾分か大きな声で言い直す。
表情の見えないまま紡がれる言葉に、雷堂は手を止めて目を見開いた。
「どうした、ライドウ」
「いなくなるんですか、貴方も……いつの間にかいなくなって、俺の知らない所でいなくなって……」
「ライ──」
「気付いたときにはもう遅くて、助けたくても手の届かない所に行ってしまっていて。やっぱり俺は間に合わない、もう二度と……ッ!」
声は次第に大きくなり、勢い良く顔を上げた時には、まるで泣き叫んでいるかのような響きを含んでいた。
涙は流していない。しかし、その顔は今にも泣き出しそうな程に悲しく歪んでいた。
沈黙が二人の間にわだかまる。交錯する視線を先に外したのは、ライドウの方。
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