双狐小咄

□夢のあと
2ページ/7ページ

「どうした、聡。そんな青い顔をして」
「いえ……」
暖かいを通り越して暑そうですらある陽射しの中、窓際に佇むいつもと変わらないゴウトの顔は、夢が夢でしかないことを教えてくれる。
夢でしか、ない。
緩くかぶりを振ってから、ライドウは自分がベッドに寝ていたことに気付いた。
確か、昨晩はライドウの方が帰りが遅かったのだ。
そして、外套と装備、上着だけを脱いだ格好でソファに横になり、その辺りから記憶が曖昧になっている。そこで眠りに落ちたのだろう。
疑問が顔に出たらしい。とすっと軽い音を立てて床に着地したゴウトが、その長い尾をゆらゆらさせながら言った。
「今朝方、雷堂がソファから落ちているお前を見付けてな。奴が気を利かせたんだ」
「雷堂、は?」
「さてな。お前をベッドに運んでからすぐに聞き込みに出掛けたきり、まだ顔は見ていない」
そうか、と深い溜め息と共に言葉を吐き出して、ライドウは瞳を伏せた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ